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愛おしいキミに極甘な林檎を
第30章 低俗な野望と片思い

引っ張られるように和室に連れて行かれるとそこには険しい顔をした祖父が座っていた。
テーブルには那砂さんが昨日持ってきて見せようとしたアルバムが置いてある。
これはまたお見合いの話をされるんだろう……。
苦い顔をしながらテーブルを挟んで祖父の対面に正座をする。
「ひとりになって少しは頭は冷えたか」
「はい。おかげで目が覚めました」
「郁哉君との見合いを考え直すことはないのか?お前の気が変われば受け入れると言っておったぞ」
「私の気持ちは変わらないので考え直すことはありません」
「では、約束した通り見合いをしてもらう。……今度はこちらの方だ。なに、性格はいい男だから心配することはない」
「っ……」
「どうした?ここまでおまえのことを思って手を回して支援しているのにまた断るのか」
テーブルに出されていたアルバムを目の前に置かれて開くのを躊躇する。
逃げ出すまで祖父を騙し続けるために一応従っておくべきなんだろうか……。
「――――千十郎様、待ってください」

