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愛おしいキミに極甘な林檎を
第30章 低俗な野望と片思い

雨音で聞こえにくかったけど名前を呼ばれた気がして視線を向けると、傘を差しているソラ先輩がいた。
「そっ…、ソラ先輩!?」
驚いている暇もくれないまま、ソラ先輩は左手で持っていた傘を落して私を引き寄せて強く抱き締めてくる。
温かい体に抱かれている時に冷たい雨の雫が降りてきて頬を滴った。
ゆっくりとソラ先輩を見上げると佐伯さんに咎めるような視線を投げてかなり警戒しているようだった。
普段は優しいけど、冷酷な瞳をすると怖い。
その姿を見て佐伯さんは怯んだのか先程まで煩かった口を閉じていた。
「佐伯さん、この人は私の大好きな彼氏です。ソラ先輩、迎えに来てくれてありがとうございます。帰りましょう」
落ちている傘を拾って渡してからソラ先輩の腕に絡みついて足を進める。
しばらく歩いてから後ろを見ると佐伯さんはもうついて来なかった。
「どうしてうちの会社の近くにいたんですか?」
「風子が傘を持って行かなかった気がするから、仕事が終わったってメッセージを見て迎えに来たんだ。……それより、さっきの男は誰?」

