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陰は陽よりも熱く
第2章 紅蓮の炎



幼い頃はよく笑っていた





両親に可愛がられ、気難しいと言われていた祖父には特に可愛がられた




「お母さん、あそこの木の横にいるのはなあに?」




そう尋ねた幼い俺

どこか悲しそうに母が微笑む



「…創は…おじいちゃんに似たのね…」


俺の一番古い記憶―――







由緒ある神社の息子に生まれても父は霊感のかけらも持たなかった



その方が幸せだと思う



俺が得体の知れないものたちに悩まされないのは祖父が張った結界の中だけ―――



毎日のように遊びに来る七葉が唯一の友達だった…




何か見ても両親には言えない…悲しそうに笑う母の顔がちらついた



そしていつも社務所にいる祖父に泣きついた



物の怪をよく見る俺を不憫に思って、祖父は次第に撃退法や呪を教えてくれるようになった




社務所の畳に寝転ぶ祖父の口癖


「いいか創護、爺はこれでも陰陽師!
張った結界は多少の物の怪ではびくともせん!…だがな…」



宮司の装束を腕捲りする祖父の年齢より逞しい腕には、なにかと闘った深い傷痕が肩から前腕にかけて刻まれていた



「…上には上がいる…油断せずにいることが一番!
お前のように力を付けはじめたのを狙うやつも少なくないからなぁ…」








小学校も高学年になると撃退も片手で済ませられるようになった



小さく呪をかけると下校途中の七葉の肩に乗ってた毛むくじゃらの子鬼のようなものは姿を消した。




「そーご!また後でねっ宿題終わらせてすぐ行くから!」


「おー、わかった」



七葉と約束して鳥居の前で別れる。



――……?



石段の途中から何か違和感を覚えた




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