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陰は陽よりも熱く
第3章 埋もれていた想い
耳から背筋、尾てい骨まで響く重低音


声と云う名の媚薬


眼鏡のレンズの奥で濡れた瞳がじっとこちらをみている


月明かりを反射して僅かに光るその二つの眼に捉えられては動けない




ゆっくりと近づいて腰に回す手の温度にびくりと反応してしまう


『……七葉…』


胸元のボタンを片手で外し耳元で囁いてくる




あぁっ…ちょっとそれは反則っ!耳元で喋んないでよっ

てかなんで脱がされてんのあたしっ!


『いいから…少しじっとしてろ…』




…っあ…ちょっと…っ…だめっ…


「だめだっつってんでしょーー!!」



ニ゛ァァッ


ぱちっと目が覚めた。



枕の上でゴロゴロしていた金太郎があたしの首元に尻尾をふりふりしてくすぐっていたらしい。


急に大声を出されてまた金太郎は不機嫌にそっぽを向いて部屋を後にする。



恥ずかしくて顔が熱くなる。


っ…信じらんない――っ…どんな夢見てんのよあたしっ!


創護に抱き締められて脱がされる夢なんてっ…


欲求不満もいいとこっ!




窓を開けて鳥居に向かって柏手を打つ


「…ぅ~今日はアイツに会いませんようにっ!」



願ったあとでため息をつく。

「はぁ…でも夢じゃなかったんだよね…アレは…」


夜の神社で起きた不思議で不気味な出来事



あたしを背負って送ってくれた創護…


その背中で感じた体温だけがリアルに残っていた。


「…学校…また早退するのかな…アイツ」





ほぼ毎日午後にはいない創護の日常にどうしようもなく興味がわいた。




―――見にいっちゃおうっ!



で、アイツに見つかる前に逃げよう!




初めての企てに自分でも浮き立つような高揚感を覚えながら学校に出かけた。



「蓮実、今日あたし早退するから!」


「なになに~お腹壊したの?気をつけないと梅雨はぁ」


「っちっがぁう!ちょっと用事があるの!」



一瞬キョトンとした蓮実がにやりと笑った。

「…ん~なるほど!黒髪の王子さまを追っかけ…か」


「っ…なんで?!」

図星を指されて驚いていると吹き出された。

「ぶっっ…七葉っわかりやすっ!
…うん、いいじゃない☆
気になるのに我慢してるよりずっと!」

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