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陰は陽よりも熱く
第4章 金色の陽は
蓮実に背中を押されて早退したあたしは遠くに見える創護の背中を見失わないように早足で歩いていた。




「もぅっ…どこに行くの……創護っ…!」


悪態をついた途端に追っていた背中がふっと煙のように消えて、見えなくなった


「…っぇ…え?!」

……どこっ…?確かにいたのにっ…!





きょろきょろと見渡す七葉の頭上から声が響く。


「――…なんの真似だ」



コンクリート塀の上に片膝を立てて屈む長身の幼なじみは苦虫を噛み潰したような顔で見下ろしている。



「っ…あ…ぇと調子悪くてっ…早退してきたのよ…っ!

…なんか文句あるっ?」


後をつけていたのを悟られまいと苦しい言い訳をしながら両手を腰にあてて仁王立ちしてみせた。



「すこぶる調子は良さそうだがな」



眉間のシワは消えてわずかに眼鏡の奥の眼光が和らいだ。


創護は呆れたように溜め息をつくと音もなく七葉の目の前に着地した。


「…っ…!な…っなによ!」


……っ………近いっ…



降り立つなり顔を覗き込んでくるものだから威圧感と気恥ずかしさで思わずあとずさりした。


―――やだ…っ今朝の夢思い出しちゃうっ…


だから顔見ないで済むようにしてたのに…っ



夢のシチュエーションほど刺激はなくとも顔を紅潮させるには充分だった。


熱くなる頬を両手で隠しながら目を背けた。



「―――…っ」


小さく息をのむ音がした。

自分の横顔に注がれていた視線が外れ

遠くのなにかに目を遣りながら若い陰陽師は呟いた。


「…七葉…お前…校門通って出てきたか」


「ぇ……近いから裏門の横抜けてきた…けど…?」







「…チッ…――」



…………入ったか…


舌打ちした創護は奥歯をギリッと軋ませて七葉が通って来た道を睨んだ。



「何……っ…?」


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