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明日に架ける橋
第2章 秘めた想い
「俺が父から譲り受けた店がいくつかあるんだけど、どれも会員制の高級クラブで、
維持費もかかる。
お店にいる女の子たちの質も数も落としたくない。そんなことしたら更に客足が鈍くなるからだ。
親父が片手間で管理してた時よりはよっぽど稼げる店にしたし、客層も広がった。
けど、やっぱり不況でこの先もこの商売を続けるのも苦しいと思ってる。全部やめないにしても、いくつかはたたまないと」

それは清人の口から初めて聞いた経営の実情だった。

「でも、ただ店を潰したら親父に対して面目が立たない。というか、いやなんだ。負けたみたいで。
ただでさえ、水商売をあの人たちは馬鹿にしてるのに、それすらできないのかと言われるのが。
だから新しい事業を始めたいとずっと考えてた。借金も増える一方、新事業の金も欲しい、
けど親父には絶対頼りたくない。なんとか今の店を建て直して資金作ろうとしてた時に君が現れた」
「新しい事業とは・・・?」
「いろいろ考えてるよ。医療や農業、旅行会社やアパレル・・・・。コネはいっぱいある。
まあ、無理せずとも君のものになった銀座のビルの家賃だけでもじゅうぶん食べて
いけそうだけどね」

清人はまわりが思っているよりずっとしっかりしていて、良く物事を考えている。
そして、軽そうに見える外見とは裏腹に、内には負けん気の強い、熱い情熱を持った部分を
秘めているのだ。

「お金を・・・・稼がないと、いけないのでしょうか」

花憐がポツリと言った。

「・・・・どういうこと?」
「私は贅沢な生活をしたいと思いません。質素でも・・・・」

(家族と一緒に暮らせれば・・・・)

続きは言えなかった。代わりに清人に質問した。

「お金のことを気にしないで良いなら、清人さんは何がやりたいですか?」
「儲けることを考えないでってこと?・・・・そうだな・・・・・」

清人はうーん・・・としばらく考え込んだ。
爽やかな風が二人の間を通り過ぎていく。
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