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明日に架ける橋
第2章 秘めた想い
「はい・・・・。そうなんです」
「あら、なんだか元気ないみたい。何かあった??」

清人が側にいない今、頼れるのは榊だけだった。

「・・・・・・」

花憐は何と言っていいのかわからず、黙り込んだ。

「・・・・あのね、あと少しで仕事が終わるの。そうね・・・30分くらい。待てる?お店に行くわ」

榊は様子を察して言ってくれた。

「はい・・・・。ごめんなさい・・・・・」

花憐は涙を目に浮かべてやっとのことでそれだけ言った。
電話を切って花憐は、自分がこんなにも無力な人間だったのかと改めて思った。

こんな時にどうしたらいいのか全くわからない。
貴子たちが追ってくることは当然わかっていたはずだが、それに対して何の策も自分には
持ち合わせていないのだ。

ただひたすら逃げるしかないのか・・・・。

どうしたら貴子たちを説得できるのか、自分に何ができるのか、花憐は自問自答した。

「・・・・花憐ちゃん?」

気がつくと榊が目の前に立っていた。

「榊さん・・・・」

榊は急いで来てくれたようだった。少し息が荒い。
今日は色のついためがねをかけていて、革のジャケットががっしりした体に良く似合っている。

「なんだかすごく思いつめた顔してるわよ。大丈夫?」
「・・・・私・・・・・」

花憐は榊に全て打ち明けてみようかと思ったが、これは自分でどうにかする問題であり、榊にまで迷惑がかかるようなことはしてはいけないと考え直した。

清人の店の小火のことが気になっていた。自分が清人と結婚したことを貴子たちは知っている。
貴子たちのしわざのような気がしてならなかった。
もしそうだとしたら、自分に関わる人に迷惑がかかる。

「ちょっと・・・新しい生活に・・・・疲れてしまったみたいで・・・・」

花憐は通じそうにない嘘をついた。

「旦那とうまくいってないの?」
「いえ・・・・。清人さんは悪くないんです。私の問題なんです・・・・」

歯切れの悪い花憐を前に、榊はため息をついた。

「まぁ、あの男と結婚したら、それなりに問題が出てくるとは思うけど・・・・」

榊は伝票を掴んで立ち上がった。

「ドライブ行きましょ!ちょっとは気晴らしになるかも」


そう言って断る花憐を押し切って会計を済ませてしまった。
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