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明日に架ける橋
第1章 エスケープ
「聖子!晴彦!ちょっといらっしゃい!!」

貴子の声に、まだ寝ていたであろう二人がしぶしぶ一階へと降りてきた。

「何よ、こんな朝早く」

聖子が気だるそうに言った。

「急いで支度しなさい!一番良い服を着るんですよ。ああ、聖子は美容室へ行った方がいいわ。
着物にしようかしら・・・」
「何よ。何があるのよ。私昼から出かける約束あるんだけど」
「そんな約束どうでもいいわ。今から桐嶋様がいらっしゃるのよ!ほら、お父様のご友人の」

聖子が誰それ、と短く呟いた。

桐嶋とは、外務省の大使である。父が生きていた頃は良く遊びに来ていたが、最近ほとんど
訪れることはなかった。

「オーストリアから帰国したばかりでね。うちに来て、お焼香させてほしいんですって。
息子さんも連れてくるそうよ!ハーバード大学卒業して、外交官になられてね」

それを聞いて聖子の顔が突如輝いた。

「その息子、独身?顔は?」
「もちろん独身よ!高校生の時に見たきりだけど、背が高くて綺麗な顔の男の子だったわ」
「ママ!一番良い服を用意して!」

聖子はバスルームへと走り、急いでシャワーを浴びは始めた。

「晴彦!あなたも早く着替えて!」

晴彦にとってはどうでも良い話だったようで、はーい・・・と気のない返事をして部屋に
戻っていった。

貴子はそわそわと落ち着かない様子で歩きまわり、自分も美容室へ行かなくてはと支度を始めた。

「花憐!ちょっと!」

貴子は花憐を呼ぶと、一気にまくし立てた。

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