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明日に架ける橋
第1章 エスケープ
どうにかして晴彦の目を盗んで外へ出たかった。

掃除に集中するふりをしてあれこれ脱出の手立てを考えていたが、晴彦は隙を与えなかった。

そのうちに貴子と聖子が戻ってきてしまった。
もうすぐ11時である。花憐の中に徐々に焦りが湧いてきた。
掃除はなんとか終えて、バラを飾っていた時だった。

「もういいわ。部屋に戻りなさい。部屋には鍵をかけるから、今日は部屋から絶対に出ないこと。出たらどうなるかわかっているわね」

部屋に閉じこもって花憐は考えた。
こうなったら、窓から脱出するしかない。
客人たちが訪れたら、貴子の注意力も散漫になるだろう。

花憐はひたすらその時を待った。
ポケットにお金と手紙を入れて花憐はベッドに座った。

車のエンジン音が間近に聞こえ、人の話し声がする。

(来たわ・・・)

花憐は耳をすまして階下の様子を伺った。
貴子のわざとらしい甲高い声が聞こえる。

一番上等な紅茶を用意しておけと言われたのだが、おそらく聖子が不慣れな手つきで紅茶の準備でもしているだろう。台所で何かが落ちる音がした。

あと10分待ったら出よう。
窓からの脱出は何度も試みたので、慣れたものである。
雨どいに足をかけて、一回の出窓の屋根に飛び移り、あとは勢いよくジャンプして地面に
降りればいいのだ。

頭の中でシュミレーションしていた時だった。
トントンとドアがノックされる。

花憐はドキリとして咄嗟に立ち上がった。
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