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明日に架ける橋
第1章 エスケープ
「はい・・・」
「俺だ。早く開けろ」

晴彦だった。いったいどうしたのだろうと花憐はいそいでドアに近づいた。

「鍵をかけられて開けられません」

花憐がそう言うと、チッと晴彦が舌打ちした。

「今日中に送らなきゃいけないハガキがあるんだ。すっかり忘れてたんだ。
駅前の大きい郵便局まで行ってきてくれ」

花憐は歓喜の声を上げそうになるのを堪えた。

「窓から出られるんだろ?郵便受けにハガキを入れておくから急いで行ってこい。
すぐに戻ってくるんだぞ」
「でもお義母さまが・・・」
「僕が見張ってるから大丈夫だ。門も開けておく。とにかく今日中に行かないとまずい。
今がチャンスなんだ」

花憐はわかりました、と声が震えないように気をつけて返事をした。
まさか晴彦がチャンスを与えてくれるとは思ってもみなかった。

晴彦がドアの前を去るのを確認すると、花憐は音を立てないように窓を開けた。
晴彦が走って郵便受けにハガキを入れるのが見えた。門の鍵を開けるとすぐにその場から離れた。

家に戻る途中で、花憐の部屋を見上げる。
花憐の姿を確認すると、頼むぞと軽く頷いた。

花憐は胸をドキドキさせながら、窓枠にまたがった。
ここで失敗したら全てが終わりだ。
この先、こんなチャンスは二度と来ないだろう。

一時的でも晴彦が味方をしてくれている。花憐は勇気付けられて窓から部屋を出た。
もうこの部屋に戻ることはないかもしれない。
急に寂しさを感じたが、今は感傷に浸っている場合ではない。

花憐は慎重に地面に降り立った。
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