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明日に架ける橋
第1章 エスケープ
ようやく大きな国道にたどり着く。
タクシーはすぐに見つかった。
花憐は全身で息をしながら運転手に行き先を告げた。
「すみません、実はこれしかお金がありません。このお金で行けるとこまで行ってください」
大量の小銭を差し出されて、運転手は面食らっていた。
一緒に小銭を数える。4712円。花憐が思っていたよりも多かった。
「これだと 登戸ぐらいまでしかいけないなぁ」
「はい。そこまででいいです。そこからは歩きますから」
運転手は花憐の切羽詰った様子に、何も言わずに頷いて車を発進させた。
車が走り出してようやく後ろを振り向いた。
誰かが追ってくる様子はなかった。
それでもまだ緊張が取れることはなく、花憐は両手をぎゅうっと握り締めてじっとしていた。
ふと気がつくと、晴彦に頼まれたハガキは手の中でぐしゃぐしゃになっている。
伸ばして見てみると、何かの応募のハガキだった。
フィギュアのプレゼントか何かだろう。おそらく今日が締め切りで焦っていたのだ。
車中から外の景色を眺める。
久しぶりに見る街の風景だった。
府中を抜けると、ようやく花憐の緊張はほぐれていった。
今頃、晴彦は焦り始めているかもしれない。もう花憐が戻ってきてもいい時間だからだ。
しかし、おそらく晴彦は自分が外に出したことはすぐに打ち明けないだろう。
客人が帰って、貴子が花憐の部屋に来て初めて騒ぎ出すのだ。
貴子は相当狼狽するに違いない。何億という財産が逃げ出したのだから。
タクシーはすぐに見つかった。
花憐は全身で息をしながら運転手に行き先を告げた。
「すみません、実はこれしかお金がありません。このお金で行けるとこまで行ってください」
大量の小銭を差し出されて、運転手は面食らっていた。
一緒に小銭を数える。4712円。花憐が思っていたよりも多かった。
「これだと 登戸ぐらいまでしかいけないなぁ」
「はい。そこまででいいです。そこからは歩きますから」
運転手は花憐の切羽詰った様子に、何も言わずに頷いて車を発進させた。
車が走り出してようやく後ろを振り向いた。
誰かが追ってくる様子はなかった。
それでもまだ緊張が取れることはなく、花憐は両手をぎゅうっと握り締めてじっとしていた。
ふと気がつくと、晴彦に頼まれたハガキは手の中でぐしゃぐしゃになっている。
伸ばして見てみると、何かの応募のハガキだった。
フィギュアのプレゼントか何かだろう。おそらく今日が締め切りで焦っていたのだ。
車中から外の景色を眺める。
久しぶりに見る街の風景だった。
府中を抜けると、ようやく花憐の緊張はほぐれていった。
今頃、晴彦は焦り始めているかもしれない。もう花憐が戻ってきてもいい時間だからだ。
しかし、おそらく晴彦は自分が外に出したことはすぐに打ち明けないだろう。
客人が帰って、貴子が花憐の部屋に来て初めて騒ぎ出すのだ。
貴子は相当狼狽するに違いない。何億という財産が逃げ出したのだから。