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明日に架ける橋
第1章 エスケープ
花憐は文子の手紙の封筒に一緒に入れておいた名刺を取り上げた。
遺産相続をとりもっている弁護士の名刺だった。
もし結婚するとなったら、この弁護士に連絡をしなくてはいけない。
この名刺は父からもらってずっと大切に保管していた。
何度も見たから、名前も電話番号も住所も覚えてしまったが、お守りのような気がして
大事にしていたのだった。
たくさんの大きな建物が見え始める。
運転手は、サービスしといたよ、といって割りと近くまで乗せてくれた。
あと二駅ほど歩けば着くというところで降ろしてくれた。
花憐はありがとうございましたと丁寧にお礼を言った。
これで本当に一文無しだった。
文子の屋敷まで急ぎ足で歩く。
時間は4時を過ぎていた。
少しでも早く文子のもとへたどり着きたかった。
貴子が花憐の逃亡に気がついて、先回りしているかもしれない。
屋敷の中に入ってしまえば、貴子とて花憐を無理やり連れ出すことはできないだろう。
途中目に入ったポストに、晴彦のハガキを投函して、花憐は走った。
住所を頼りに、道に迷いながら見覚えのある門構えの前に到着した。
もう何年も美容室などいかずに、自分で切りそろえてきた黒く健康的な髪は、急いだせいで
乱れていた。
花憐は縛っていたゴムを外し、もう一度綺麗に髪を整える。
2日風呂に入っていないので、そこらじゅう汚れている気がする。
それ以前に、こんなボロボロの服で伯母の前に現れていいものか迷ったが、ぐずぐずしていたら貴子に見つかってしまうという強迫観念から、花憐は門脇のインターフォンに手を伸ばした。
一気に緊張が高まる。どうか追い返されませんようにと心の中で祈った。
遺産相続をとりもっている弁護士の名刺だった。
もし結婚するとなったら、この弁護士に連絡をしなくてはいけない。
この名刺は父からもらってずっと大切に保管していた。
何度も見たから、名前も電話番号も住所も覚えてしまったが、お守りのような気がして
大事にしていたのだった。
たくさんの大きな建物が見え始める。
運転手は、サービスしといたよ、といって割りと近くまで乗せてくれた。
あと二駅ほど歩けば着くというところで降ろしてくれた。
花憐はありがとうございましたと丁寧にお礼を言った。
これで本当に一文無しだった。
文子の屋敷まで急ぎ足で歩く。
時間は4時を過ぎていた。
少しでも早く文子のもとへたどり着きたかった。
貴子が花憐の逃亡に気がついて、先回りしているかもしれない。
屋敷の中に入ってしまえば、貴子とて花憐を無理やり連れ出すことはできないだろう。
途中目に入ったポストに、晴彦のハガキを投函して、花憐は走った。
住所を頼りに、道に迷いながら見覚えのある門構えの前に到着した。
もう何年も美容室などいかずに、自分で切りそろえてきた黒く健康的な髪は、急いだせいで
乱れていた。
花憐は縛っていたゴムを外し、もう一度綺麗に髪を整える。
2日風呂に入っていないので、そこらじゅう汚れている気がする。
それ以前に、こんなボロボロの服で伯母の前に現れていいものか迷ったが、ぐずぐずしていたら貴子に見つかってしまうという強迫観念から、花憐は門脇のインターフォンに手を伸ばした。
一気に緊張が高まる。どうか追い返されませんようにと心の中で祈った。