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明日に架ける橋
第1章 エスケープ
「座ってちょうだい。疲れたでしょう」

文子に促されて、花憐はようやくソファに座った。

「来てくれて、本当に嬉しいわ。もしかしたら来てもらえないんじゃないかしらって心配してたの」

文子は花憐をまっすぐ見つめて言った。

「とんでもないです。お声をかけてくださって・・・。感謝しています」

先ほどの女性がお茶の用意をして部屋に入ってきた。

二人の前にあるテーブルにティーカップとスコーンのセットを置く。

「あなた、スコーンが好きだったわよね。覚えてるかしら?久しぶりにスコーンを焼いてみたのよ」
「・・・伯母さまが焼いてくれたのですか?」
「腕が落ちてなければいいけれど」

そう言って花憐の前にスコーンを二つ乗せた皿と、生クリームとジャムを置いてくれた。
焼きたてのスコーンの良い香りが漂ってきた。

花憐は脇にあった手拭ようのタオルで丹念に手を拭き、スコーンを手に取った。

「いい香り・・・。いただきます」

そう言ってジャムを少しつけて食べた。
甘すぎないママレードのジャムと、温かいサックリした食感のスコーンは、朝から何も
食べていない花憐の胃を優しく刺激した。

「おいしい・・・」

スコーンなど何年も食べていなかった。甘いもの自体食べる機会が少ないのだ。
花憐は文子の心遣いに思わず目を潤ませた。
花憐は食欲を抑えきれず、あっという間に二つのスコーンを食べてしまった。

すぐに文子がスコーンを足してくれる。
文子は花憐がお腹をすかせていることを知って、女性にサンドウィッチを作るように命じた。

用意されたサンドウィッチを全て食べ、差し出されたミルクティーを飲むと、花憐はようやく心を落ち着けた。

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