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明日に架ける橋
第1章 エスケープ

花憐が暮らす家は、東京の府中にあり、自然に囲まれている大きな古い洋館だった。
祖父の時代からあるこの家は古いながらも趣きがあり、父も母も、花憐もとても気に入っていた。
庭はさほど大きくないが、いろいろな種類の花や草木が植えられ、鳥や蝶がやってくる。
幼い頃は庭で父と良く遊んだことを思い出す。
しかし、記憶は最早鮮明ではなく、古く擦れたフィルムで見る映画のようだった。
母は花憐が8歳の時に病気で亡くなった。もともと体の弱かった人のようで、花憐を産んでからというもの更に体調を崩すようになっていた。
優しく、美しかった母の一番強く残っている記憶は、ベッドで横になっている姿だった。
それでも調子の良い時は一緒にお菓子を作ったり、絵本を読んでくれたり、散歩に出かけたりもした。
そんな母を、父はとても愛していた。
外交官として働いていた父は、忙しい人ではあったが、時間がある時は母や花憐と一緒に過ごし、どこかへ連れていってくれたり、得意料理を振舞ってくれたりした。
三人で庭に寝転んで昼寝をするのが花憐は大好きだった。
木陰にシートをひいて、お茶をしながらのんびりする。母がうとうとした横で花憐もうとうとする。
父が毛布をかけてくれる。
一番幸せな時だった。
祖父の時代からあるこの家は古いながらも趣きがあり、父も母も、花憐もとても気に入っていた。
庭はさほど大きくないが、いろいろな種類の花や草木が植えられ、鳥や蝶がやってくる。
幼い頃は庭で父と良く遊んだことを思い出す。
しかし、記憶は最早鮮明ではなく、古く擦れたフィルムで見る映画のようだった。
母は花憐が8歳の時に病気で亡くなった。もともと体の弱かった人のようで、花憐を産んでからというもの更に体調を崩すようになっていた。
優しく、美しかった母の一番強く残っている記憶は、ベッドで横になっている姿だった。
それでも調子の良い時は一緒にお菓子を作ったり、絵本を読んでくれたり、散歩に出かけたりもした。
そんな母を、父はとても愛していた。
外交官として働いていた父は、忙しい人ではあったが、時間がある時は母や花憐と一緒に過ごし、どこかへ連れていってくれたり、得意料理を振舞ってくれたりした。
三人で庭に寝転んで昼寝をするのが花憐は大好きだった。
木陰にシートをひいて、お茶をしながらのんびりする。母がうとうとした横で花憐もうとうとする。
父が毛布をかけてくれる。
一番幸せな時だった。

