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明日に架ける橋
第1章 エスケープ
「良い人ねえ・・・。まあ、表向きはみんな優しい男を演じるわよね。特にこういうところに来る男は」
「榊さんはどんな方がタイプなんですか?」
「え!?ワタシ!??ワタシは、強気で男気のある人が好き。普段はついてくんなよ!さわんなよ!みたいな感じなんだけど~時々すっごく優しい、みたいな」

少女のように目を輝かせて話す榊を見て、花憐は微笑まずにいられなかった。

「榊さん・・・。ありがとうございました。さっき、助けてくれて・・・・」
「なんか、あなたってほっとけないっていうか・・・。不思議よね。さっき会ったばっかりなのに。久しぶりに会った結婚適齢期の妹みたい。お節介したくなっちゃうのよね」

こんな人が側にいてくれたら、自分の人生はもっと違っていたかもしれない。
そう思わせる器の大きさを榊に感じた。

「本当はもっとお話したいんだけど、今日これから一つ仕事があるのよ。ごめんなさいね。
でも、帰る前にあなたと一曲踊りたくて」
「え?・・・・踊る?」
「そうよ。普段ダンスなんて恥ずかしくてやらないけど、あなたと踊って、さっきの男どもを唸らせたいの。ね、いいでしょ??」
「む、無理です!私、踊れません」

嫌がる花憐を無理やり立たせて榊は隣の部屋へ移動した。

「大丈夫よぉ。ワルツなんて年寄りや頭の悪い貴族でも踊れるようにできてるんだから。
簡単なの!あなたならすぐ踊れるようになるわ。教えてあげるから、大丈夫!」

何組かの男女がワルツを踊っているところだった。
榊が花憐の右手を取って、左手を肩のあたりに添えさせる。
榊の大きな手が腰にまわると、思わずドキリとした。

「姿勢はいいわね。ワルツは三拍子よ。足をチェンジさせるのが最初は難しいかもしれないけど、もうどんどん足踏んでもらってかまわないわ。あなたはワタシに合わせて動いてくれればいいの。
ワタシが動いたところについていくだけ。ターンなんて適当よ。楽しく踊ればそれでいいの。最初はゆっくり動くから、焦らないでついてきてね」

それだけ言うと、榊は音楽に合わせてワルツの輪の中に入っていった。
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