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明日に架ける橋
第1章 エスケープ
「寒いでしょう。これをどうぞ」

清人がスーツの上着を脱いで花憐の肩にかけてくれた。

「いいえ、大丈夫です。これではあなたが風邪を引いてしまいます」
「私は大丈夫です。散々酒を飲まされたから、少し酔いを醒ましたほうがいいんですよ」

しかし、シャツだけの姿になった清人の体は細く、どうしても寒そうに見えてしまう。

「では、もうお家の中に戻りましょう。温かい飲み物でも頂いたほうが・・・」

そう言って立ち上がった花憐の腕を、清人は慌てて掴んで座らせた。

「待ってください。もう少しここで・・・あなたとお話したいんです」

清人の手の力は思ったより強く、花憐は引かれるままにベンチに座った。
先ほどより距離が近くなってしまった。膝と膝が触れ合いそうなぐらいだった。

清人の体温が残った上着は暖かく、花憐は申し訳ない気持ちでお礼を言った。

「ワルツがお好きのようですね」

言われて花憐は目を丸くした。

この人は私が踊るところを見たのかしら?あんなぎこちない動きを見て’お好き’だなんて・・・・。


「とんでもないです。今日までワルツなんて踊ったこともなかったんです。みなさんにお誘いを受けて仕方なく・・・」

仕方なくと口にしてしまって、しまった!と思ったが遅かった。

「それを聞いて安心しましたよ。あなたは男性を弄ぶようなタイプではなさそうだ」
「弄ぶだなんて・・・そんな・・・・」
「私もあなたと踊りたい、と言ったら’仕方なく’オーケーしてくれますか?」

清人は立ち上がって花憐に手を差し伸べた。

「・・・・ここでですか?」
「ここで、です」
「でも・・・間違いなくあなたの足を踏んでしまいます」
「いいですよ。あなたのような女性に足を踏まれるなんて光栄だ」

足を踏まれて光栄・・・?

花憐はなんておかしなことを言うのだろうと、思わずクスリと笑った。

「では、少しだけ・・・・」
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