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明日に架ける橋
第1章 エスケープ
花憐は清人を見上げた。
少し茶色いその瞳をじっと見つめる。

清人がどんな人物なのか、何かてがかりを見つけることはできないかといった風に、強い意志をたたえた眼差しでじっと見つめた。

清人は少しも怯むことなく、花憐の目を見つめ返した。

(この人に・・・・話してみよう・・・・)

ドキン・・・・ドキン・・・・

心臓が強く打ち始め、自然と冷や汗が出て、背中をツツ・・・と伝った。
花憐にはもう選択肢などないのだ。

今、この瞬間も貴子たちは花憐を探し歩いている。もしかしたら、この屋敷の外で花憐が出てくるのを待ち構えているかもしれない。

清人が承諾するとはとても思えなかったが、だからといって、他に何ができるというのだろう。
このまま貴子たちに連れ戻されたら、今度は体に傷をつけられるだけでは済まないだろう。
外には一歩も出られない顔にさせられるに違いない。

「あなたに・・・お願いがあります」

ただならぬ雰囲気で口を開いた花憐を見ても、清人は動じなかった。

「なんでしょう?」

花憐は祈りをささげる時のように両手を組んで力を込めた。

「私と・・・結婚してほしいのです」

搾り出すように奮える声で花憐は告げた。

これにはさすがに清人も面食らった様子で、目をわずかに開いて絶句した。

「先の話ではありません。今すぐにです。明日にでも」

花憐はたたみかけるように言った。

「結婚だって・・・・?」
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