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明日に架ける橋
第1章 エスケープ
清人はようやく落ち着きを取り戻したようで、先ほどのように足を組んでゆったりとした姿勢で座りなおした。

「・・・・もし俺が断ったらどうするの?他の結婚相手を探しにいく?」

パーティー会場に戻って、結婚相手を次々に探すような真似をしたら文子に迷惑がかかる。
そんなことはできないことだった。しかし、花憐はゆっくり頷いてみせた。

「そうするしか、方法がありませんから」

花憐はまっすぐ清人を見つめた。
強い意志を持っての提案なのだとわかって欲しかった。

「なるほど。君に結婚してくれと言われたら、喜んでする奴らばかりだからな。5人も
まわらないうちに君は結婚相手を見つけることができるよ」

花憐は断られるのだと、一瞬気落ちした。
しかし、次の瞬間清人に手を掴まれて引き寄せられていた。

ベンチに座った清人の目の前に立たされた。

「携帯電話は?」
「持っていません」
「・・・今夜はここに泊まるの?しばらくこの屋敷に?」
「今夜はここに泊まらせてもらいます。でも、明日には出るつもりでいます。そう長いことこの家にいるわけにはいきません」

清人は花憐の手の甲を撫でた。視線は遠くを見ており、どうやら無意識に指が動いているといった様子だった。

「・・・少し考えさせて欲しい。いや、わかってる。君にはどうやら時間がないみたいだから、明日の朝には返事をする。だから他の男に頼みに行くのは、今日はもうやめてくれないか」

少し考えたい・・・。

当然のことだろう。しかし、清人が言うように、花憐には時間がなかった。
明日の朝になってやっぱりダメだと言われたら、あとはどうしたらいいか、もう花憐には考えることができなかった。

表情を曇らせた花憐を見て、清人は付け足すように言った。

「心の整理がつかないだけで、もう本当は決まってるんだ。君はなかなか良い人選をしたよ。
俺は今、君の掲示した金がとても欲しい状況だからだ。あなたに一目ぼれしたから結婚して
ほしい、という場合はすぐにお断りするが、お互いの私欲のための結婚だというなら前向きに考えられる」

清人のその言葉に花憐は驚きと同時に喜びを露わにして、その場に跪いた。
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