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明日に架ける橋
第1章 エスケープ
花憐が16歳の時に父が心筋梗塞で倒れた。それまでも心臓が原因で通院をしていたが、意識を失ったのは初めてだった。

一時は意識が戻って、話ができるほどに回復したものの、手術を受けることになっていた前日に再び意識がなくなり、そのまま帰らぬ人となった。花憐を守るものは何もなくなってしまった。

貴子の態度は豹変した。

それまでいたお手伝いさんは即解雇され、花憐が家のことをするように命じられる。
掃除、洗濯、炊事・・・。
学校へ行きながら、家中の用事をさせられた。

花憐に小遣いなど与えず、食事もまともに食べさせなかった。風呂は三日に一度。それは今も変わっていない。

エスカレーター式の学校だったから、高校は卒業させてもらえたが、小遣いが与えられないため、友人と遊びにもいけず、家の用事もあるから学校が終わるとすぐに帰宅しなくてはいけない。

まともな弁当を持参できず、使い古したものばかりを使う花憐は、クラスでも浮くようになり、友達と呼べる人は一人もいなかった。

そのまま卒業し、就職もしないまま、今は有坂家の召使のような生活をしているのだった。

貴子は花憐を近所の商店街以外に買い物に行かせなかった。その際も、自分か子供たちが同行する徹底ぶりだった。電話にも出させないし、郵便物にも触れさせない。

それには大きな理由があった。

貴子は内縁の妻にあたるから、遺産相続の権利はない。

貴子がどんなに押しても、父は法的に結婚することはせず、貴子は家に転がり込んできたときは既に40歳近くになっていたが、なんとか父の子を妊娠しようと必死だったようだ。

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