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明日に架ける橋
第2章 秘めた想い
「・・・・花憐、それは本当ですか?」

花憐はうつむいていた顔を上げ、文子を見つめた。

文子は清人がどんな人物なのか、花憐よりも知っているのだろう。その表情は明らかにこの結婚には賛成しかねると訴えていた。

文子としては、花憐に幸せな結婚をしてほしいと願っているに違いなかった。

遺産のことで焦る気持ちがあるのは理解できるが、せめてもっと誠実な、花憐をちゃんと愛してくれるような男を選んで欲しいと思っていることが表情から読み取れた。

しかし、文子は知らないのだ。花憐が深い傷跡を持った自分の体を醜いと感じ、こんな体では誰も愛してくれはしないだろうと感じていることを。
この体を見たら、自分と結婚したことを後悔するに違いないと恐れていることを。

他の女性と交際を続け、自分には見向きもしないでいてくれるような男性の方が、花憐にとってはよっぽど適役だった。

「本当です・・・。大河清人さんと結婚しようと思います」

花憐は文子をまっすぐ見つめて力強く言った。
文子は何も言わずしばらく花憐を見つめたあと、紅茶のカップを手に取り、一口すすった。

「あなたが決めたのなら・・・」

そうつぶやくと小さくため息をついた。


文子には自分がこの結婚を反対する権利などないと思っているようだった。
今まで何年も花憐のことを放っておいたのである。
自分が今更何を反対できるというのだろう、と。

「伯母さまにはご迷惑をおかけするようなことはしないと約束します。
私のことはご心配なさらないでください。きっと・・・・幸せになりますから」

花憐の本心だった。少なくとも今までの生活よりはずっと幸せに暮らせるに違いない。
清人との愛情を求めてはいない。花憐はただただ平穏な生活を手に入れることができれば良かった。

文子は花憐に頷いてみせた。花憐の強い意志をじゅうぶん理解したようだった。

「大河さん。この子はとても心の優しい子です。それは繊細であるということでもあります。どうかこの子が傷つくことのないよう、守ってあげてください。よろしくお願いします」
「もちろんです。安心してお任せください」

清人は先ほどの軽い口調から一変して、とても真面目な様子で言った。

文子は清人の目に虚偽がないか探るようにじっと見つめたあと、最後に花憐と二人で話がしたいと言った。
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