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明日に架ける橋
第2章 秘めた想い
「奥様がお土産にと。スコーンです」

使用人の女性が花憐に紙袋とハンドバッグを渡した。

茶色のハンドバッグは少し古い感じがしたが、とても高級そうで、花憐は戸惑いながら「これは?」と訪ねた。

「奥様が昔、花憐様のお母様からプレゼントでいただいたバッグだそうです。
花憐様に使って欲しいとのことでした」

(お母さんのバッグ・・・)

突然、母の香りが漂ってきそうな気がして瞳が潤む。
使用人の女性が玄関の扉を開けてくれたので、慌てて後に続いた。

花憐は手に持っていた文子からのプレゼントのネックレスが入った箱をバッグの中に入れた。
スコーンが入った紙袋と、昨日まで着ていた粗末な服が入った袋、それからバッグ・・・。

玄関の外で待っていた清人が、それらを花憐から取り上げて、車へと誘導した。
運転手付きの黒いベンツだった。

花憐は女性に丁寧にお礼を言って頭を下げてから車に乗り込んだ。
ゆっくりと門が開き、車が屋敷の外をでる。

花憐は反射的に身を屈めた。貴子たちがどこかで潜んでいないだろうか・・・。
周囲に視線を巡らしてみたが、屋敷の前の路地には通行人も、誰もいなかった。

少し安心して体勢を整え、座席に座り直した。
スコーンの袋の中をのぞくと、封筒が入っていた。

すぐに開けてみると、現金が入っていた。当面の生活費にしろということのようだが、文子にここまでしてもらうわけにはいかないと花憐は思った。

使わずに取っておこう。そしていつか返しにいこう。そう硬く誓ったのだった。

「さて、早速役所へ行こうか。それとも弁護士と会うのが先かな」

文子に対しての感謝の気持ちで胸がいっぱいの花憐に対して、清人の口調はとても冷めたものだった。


「大事なことだけど、君は身分を証明するものを何か持っているの?」

清人に言われて、花憐の顔色がさっと青ざめる。

「・・・・持ってません」

健康保険証は持っていたが、父が亡くなってすぐに貴子に奪われてしまったのだった。
パスポートがあるはずだが、父が管理しており、今は貴子が管理しているのかどうかも
わからなかった。

「家に取りに行くことは?」
「それは駄目です・・・・・!」
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