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明日に架ける橋
第2章 秘めた想い
清人はため息をつくと、少しの沈黙の後、運転手に行き先を告げた。弁護士の事務所だった。

「君の弁護士に昨日電話した。きちんと説明してもらったよ。でも一度君と一緒に行った方がいいだろうな。
身分証のことも、弁護士に聞いてみよう」

清人はいたって事務的に話した。これから結婚するという浮かれた雰囲気は全く無い。
この結婚に対しては、お互い冷静であるべき・・・。そう花憐に言っているようでもあった。

「戸籍謄本を取り寄せたら、すぐに婚姻届を出そう。正式に結婚が完了するまでだけど・・・。
君はどこか行くあてがあるの?」

清人の口調はいたって事務的だった。
自分がそういう結婚を望んだのだ。それ以上何を求めるというのだろう。

花憐は清人の問いに、無言で首を横に振って答えた。

「それなら君が自分の家で暮らせるようになるまでは俺の家にいるしかないな。
部屋は余ってるから問題ない。同居人としてのルールを守ってくれれば、俺は我慢する。
まあ、そう長くはかからないだろうし」

’我慢する’というフレーズがひっかかったものの、花憐にとってもう頼る人間は清人しか
いないのだ。

「すみません・・・。宜しくお願いします・・・・」
「そう下手に出ることはないよ。俺としてもこの結婚はありがたい話なんだ。今の時代、
大金積んで結婚してほしいなんて申し出る人なんかいない。俺に最初に声をかけてくれて、
ありがたいとさえ思ってる」

清人は上機嫌な様子で言った。頭の中で金勘定をしているのだ。

自分から提案したものの、何も知らないこの男に、父や母の財産を譲り渡していいのだろうかと、花憐は今更ながらに迷い始めた。

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