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明日に架ける橋
第2章 秘めた想い
「花憐、入るよ」

ノックの音と、清人の声がして、花憐はハッと目を覚ました。
心臓がドキドキと早く打っていた。

貴子につかまり、首をおさえつけられ、顔に熱湯をかけられそうになる夢を見ていた。
恐怖で声を出すことも出来ないでいる時に聞こえてきた清人の声だった。

外を見ると、日が落ちかけ、薄暗くなり始めていた。
急いで起き上がり、扉を開けにいく。

「お帰りなさい」

花憐は眠っていたことを悟られないように、表情を作ったが、清人にはお見通しのようだった。

「良く眠れた?起こして悪かったね」

そう言って、花憐の乱れた髪を手で撫で付けて整えてくれた。
思わずドキリとして、さっと清人から離れた。

「・・・書類は揃いましたか?」
「ああ。あとは君と保証人に婚姻届を書いてもらって、提出するだけだ。明日一緒に出しに行こう」

清人はそう言うと、リビングと寝室のシャッターを下ろしに回った。

「さて、明日婚姻届を出す前に、一応形式的に俺の両親に会って欲しいんだけど。いい?」

それは花憐がずっと気にかけていたことなので、二つ返事で頷いた。

「じゃあ、今から明日の服を買いに行こう。明日の服だけじゃなくて、当面過ごせる服や下着も買わないと。靴もね」

清人が花憐の手をひいて、外へ連れ出そうとした。
突然のことに花憐は驚いて、立ち止まった。

「あの、この服じゃだめですか?私、お金持ってないんです・・・」

清人は一瞬何のことだといった顔をした後、微笑んで再び花憐の手を引いた。

「’今は’持ってないだけだろ?そのぐらい、俺が出すさ。君は俺のお嫁さんになるんだから、そんなこと気にしてたらだめだ」

先ほどとは別の車の助手席に花憐を乗せ、今度は清人が運転席に乗り込んだ。

(お嫁さん・・・・・)

清人の言葉が妙にくすぐったく、花憐の心を少し温かくした。


「どんな服が好み?まあ、明日の挨拶の時に限っては、今日みたいな清楚な感じがいいだろうね」
「特に・・・ありません。お任せします」
「いくつか知り合いの店があるから、一通り回ってみよう」

運転する清人の姿を、花憐はこっそり見つめた。
こうして大人の男性の運転で、どこかへ行くということがなかっただけに、緊張してしまう。

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