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明日に架ける橋
第2章 秘めた想い
二人はこぢんまりとしたイタリア料理店に入った。

証明は薄暗く、壁いっぱいにワインが並べられている。微かに音楽が聴こえ、人々はゆったりと食事を楽しんでいた。

「君は何が好き?」

何が好きかと聞かれても、答えられなかった。好き嫌いなど許されるはずもなく、いつも貴子たちの残り物を食べていた。わずかばかりの食事で、いつもお腹がすいていた。

「何でも好きです」
「そう。じゃあ、適当に頼むよ」

清人はいくつか料理を頼み、ワインも頼んだ。

「あの、お酒いいんですか?車なのに・・・」
「代行を頼むからいいよ」
「代行・・・」
「代わりに運転してくれる人、ね」

ワインが運ばれて、清人が試飲すると、花憐のグラスにワインが注がれた。

「では、私たちの出会いに。そして未来に」

清人がかっこつけてグラスを掲げた。
花憐も軽くグラスを上げて応える。

ワインの味はおいしいのかどうなのか、花憐には全くわからなかったが、苦味は気になるほどではなく、一杯程度なら飲めそうだった。

最初に前菜二品が運ばれ、花憐にだけ温かいスープが運ばれた。
野菜と魚介類のたっぷり入ったスープだった。

「おいしい・・・・!」

花憐は目を輝かせて喜んだ。疲れた体に優しさが染み渡っていくようだった。

「食べ物も、ワインも、服も・・・。どんな好みなのか知らずに結婚するなんてね」

清人が優しく微笑みながら花憐を見つめた。
薄暗い店内で見る清人は、美しさと妖艶さを兼ね備え、花憐をドキリとさせる。

「まあ、これから少しずつ知っていけばいいだけのことだけど」

これから知っていく・・・。
花憐の方こそ、清人のことを全く知らない。

献身的に尽くしてくれるのは、花憐の財産が目当てだとわかっていた。
清人の携帯電話にはひっきりなしに電話がかかってくる。

仕事の電話の時は花憐の前で話をするが、花憐のいない場所にいったり、出なかったりする時はおそらく女性からなのだろう。

(これ以上、この人のことを’知らない方がいい’のだわ・・・きっと・・・・)

清人の優しさは、自分を想ってくれているのだと勘違いしてしまいそうになる。
花憐は話の方向を自ら変えた。

「・・・・清人さんのご両親は、結婚を承諾してくれるでしょうか」

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