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明日に架ける橋
第2章 秘めた想い
何てことを聞くのだろうと、花憐は唖然とした表情で清人を見つめた。
そんな経験、あるはずがなかった。知識としては、高校生のころまでにクラスメートや授業で聞くぐらいのものしか持ち合わせていない。

「あるの?」
「ありません!」

清人がなぜそんなことを聞くのか、花憐には理解できなかった。
清人が顔を寄せて、キスしようとしてきたので、花憐はとっさに手で顔を隠しガードした。

「子供は欲しくないの?」

清人の言葉に、花憐の体の力が緩む。

「子供・・・・?」
「女の人は子供を欲しがるだろ?」

天涯孤独と思って生きてきた花憐にとって、それはまるで夢の世界の話のようだった。

(私の・・・・子供・・・・・)

清人の質問に、花憐の思考は獲りつかれてしまった。
心の奥に眠っていた願望が徐々に膨れ上がる。

「欲しいんだね?」

花憐はゴクリ・・・と喉を鳴らした。

確かに子供は欲しい。命をかけて愛することができるに違いない。自分の生きがいになることもはっきりと想像できた。

しかし、愛し合っていないもの同士が子供をもうけていいものか、花憐にはわからなかった。

「・・・・あなたはいいんですか?本当の・・・夫婦でもないのに、子供を産んでも・・・」
「本当の夫婦じゃない?気持ちのこと?そんなこと気にしないよ。日本だって、昔は見合い
結婚ばかりで、結婚したらお互いのことも良くしらないまますぐに子作りじゃないか。
愛情云々じゃなく、跡継ぎのために結婚してるようなものだろ?
うちの両親だって、決して愛情があったとは思えないけど、五人も産まれたからね」
「それは・・・」
「俺は特別欲しいとは思わないけど、君が欲しいなら協力してもいい。金はあるし、
一人ぐらい苦もなく育てられるだろう」

清人のいいたいことはわかるが、深く愛し合っていた両親のもとに生まれた花憐にとって、
清人の言い分にはどうも抵抗を感じてしまう。

「子供がいたら、今までの苦労も忘れるさ。時間を持て余すこともなくなる。きっと君は幸せを感じると思うよ」

清人はまるで他人事のように言った。

子供を授かる・・・。今の花憐にとってこんなに魅力的なことはなかった。



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