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明日に架ける橋
第1章 エスケープ
花憐は咄嗟に顔を手で隠し、身をよじったが、右腕と右胸にかけて深い火傷を負った。

病院に運ばれ、貴子は半狂乱を演じて、事故だったことを説明した。
それは花憐の体に傷をつくって、嫁に行かせないようにするための行為だった。

花憐は貴子にやられたのだと主張するのをやめた。
貴子が証拠を残しているとは思えなかったし、主張したところで、後の報復を恐れたからだ。

火傷を負った自分の体を見て愕然とした。

母ゆずりの真っ白な肌は、外出を禁止されてからいっそう白くなっていたが、その白い肌に赤紫色の火傷の跡が右の鎖骨の下あたりから右胸全体に広がっている。

右腕は更に深い跡になっており、二の腕から肘の下まで別の生き物の皮を縫いつけたようであった。

自分でも目を背けたくなる光景だった。
火傷の跡は時間とともに薄くなっていったが、消えることはなかった。
胸に広がる茶色く変色した皮膚は花憐を落ち込ませるには十分だった。

寒かったり疲労が重なると引き攣れて痛くなる右腕も同じだった。

貴子の思惑は成功したといえる。
花憐はこんな体で自分を嫁にもらってくれる人などいるはずがない・・・。

それ以来、花憐は逃亡することをやめ、従順に貴子たちに尽くすようになった。
24歳になったからといって、貴子が自分を自由にさせるとも思えなかった。

花憐が受け取る遺留分の金を、どうやって花憐から奪おうかと虎視眈々と狙っているに違いない。
もしかしたら晴彦と結婚でもさせようと考えているかもしれなかった。

24歳になるまで、あと三ヶ月と迫っている。
貴子は指折り数えているだろう。最近はやたらと機嫌が良い。

そんな時に届いた伯母からの手紙だった。
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