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明日に架ける橋
第1章 エスケープ
文子は父の歳の離れた姉で、花憐の父同様外交官である鴻池という男と結婚し、今は世田谷の大きな屋敷で暮らしている。

花憐も、まだ母が元気だった頃に父と三人で遊びに行ったことがあった。

文子は子供好きで、自分の子供は男の子ばかりだったから、女の子の花憐をとても可愛がってくれた。
また、文子と母は気が合い、とても仲が良かった。二人は姉妹のようだと父が良く言っていた。

しかし、母がいなくなり、父の生活が乱れ始めると、徐々に疎遠になっていった。

貴子と暮らし始めてから、一度だけ文子は夫と訪れたことがあったが、文子が貴子と言い争っていたのを花憐は良く覚えていた。

貴子が花憐の母のものを全て処分したことがきっかけのようだったが、その時の争いを最後に、
文子が自分の実家でもあるこの家を訪れることはなくなり、連絡も一切よこすことはなかった。

貴子にこの手紙が見つかったら、どんなことになるか・・・。

夜になり、花憐は自分の狭い部屋に戻ると、窓辺に寄った。
電気を使わせてもらえないので、月明かりで読むしかないのだった。

ポケットの中でくしゃくしゃになってしまった手紙のしわを、花憐は丁寧に手で伸ばした。

心臓がドキドキと高鳴る。
意を決して封を開けた。
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