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明日に架ける橋
第2章 秘めた想い

清人の実家の大河邸は、純日本家屋の大きな家だった。
庭も広く、大きな池やゴルフの練習コーナーも設けてある。
案内された応接間は、古く高価な調度品が置かれ、たくさんの絵画が壁に飾られていた。
形式的な挨拶を済ませたあと、清人の両親と向かい合わせになるように花憐と清人は座った。
清人の父は、背が低く小太りで、頭は薄く、目は細く、異様に大きい鼻が顔のバランスを
悪くしていた。
母親の方は細く色白で、鼻筋も通っており美人だったが、つり上がった目と眉がキツい印象を与えた。
清人は強いて言えば母親に似ている気がするが、そっくりというわけでもなかった。
「お父さん、お母さん、僕たちは今日婚姻届を出してくるつもりです」
清人は和やかに報告した。そこには反対を受け入れる余地はなく、これは決定事項の報告で
あるという強い意思が感じられた。
「お前はどうしてそう、性急なのだ。まともな挨拶もなく、結納もせずに結婚だなんて・・・・」
清人の父はそう言いながら、花憐をちらちらと見定めていた。
「兄さんたちはみんな見合いだから順序だてて結婚しただけで、今はそこまで手順を踏みませんよ。それに僕たちは少々急がねばならない理由があります」
清人の意味深な言い方に、清人の父も母も思わず驚いた表情を浮かべた。
「あなた、まさか・・・・」
それまで大人しくしていた清人の母が、花憐のお腹に視線を向けた。
妊娠したのだと思っているらしかった。
花憐は慌てて弁解しようと清人を見たが、清人はにっこり微笑むと、婚姻届を父親の前に
差し出した。
「お父さんに保証人になっていただきたいんです。彼女の保証人は鴻池夫人になっています」
妊娠について否定も肯定もしない清人を凝視しながらも、文子の名前が出てきたので、清人の父親は反射的に婚姻届に目を向けた。
「・・・・あなたは鴻池夫人の姪御さんと伺っていますが・・・・」
そこでようやく清人の父が花憐に話しかけた。
「はい」
花憐は余計なことは言わず、返事だけすることに決めていた。
清人からもそう言われていたのだった。
庭も広く、大きな池やゴルフの練習コーナーも設けてある。
案内された応接間は、古く高価な調度品が置かれ、たくさんの絵画が壁に飾られていた。
形式的な挨拶を済ませたあと、清人の両親と向かい合わせになるように花憐と清人は座った。
清人の父は、背が低く小太りで、頭は薄く、目は細く、異様に大きい鼻が顔のバランスを
悪くしていた。
母親の方は細く色白で、鼻筋も通っており美人だったが、つり上がった目と眉がキツい印象を与えた。
清人は強いて言えば母親に似ている気がするが、そっくりというわけでもなかった。
「お父さん、お母さん、僕たちは今日婚姻届を出してくるつもりです」
清人は和やかに報告した。そこには反対を受け入れる余地はなく、これは決定事項の報告で
あるという強い意思が感じられた。
「お前はどうしてそう、性急なのだ。まともな挨拶もなく、結納もせずに結婚だなんて・・・・」
清人の父はそう言いながら、花憐をちらちらと見定めていた。
「兄さんたちはみんな見合いだから順序だてて結婚しただけで、今はそこまで手順を踏みませんよ。それに僕たちは少々急がねばならない理由があります」
清人の意味深な言い方に、清人の父も母も思わず驚いた表情を浮かべた。
「あなた、まさか・・・・」
それまで大人しくしていた清人の母が、花憐のお腹に視線を向けた。
妊娠したのだと思っているらしかった。
花憐は慌てて弁解しようと清人を見たが、清人はにっこり微笑むと、婚姻届を父親の前に
差し出した。
「お父さんに保証人になっていただきたいんです。彼女の保証人は鴻池夫人になっています」
妊娠について否定も肯定もしない清人を凝視しながらも、文子の名前が出てきたので、清人の父親は反射的に婚姻届に目を向けた。
「・・・・あなたは鴻池夫人の姪御さんと伺っていますが・・・・」
そこでようやく清人の父が花憐に話しかけた。
「はい」
花憐は余計なことは言わず、返事だけすることに決めていた。
清人からもそう言われていたのだった。

