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明日に架ける橋
第2章 秘めた想い
そろそろ清人が帰ってくるかもしれない。花憐は食事の準備をすることにした。
準備といっても、皿を用意したり、グラスを磨いておくぐらいだった。

清人が帰ってきたら温めて出すだけだった。
テーブルセッティングを終えて、席について清人を待つ。

帰ってくる人を待つというのは、なんだか嬉しいものでもあった。
花憐はたとえ一時でも、こうして誰かと人並みの生活をして過ごせることが嬉しかったのである。

少しの間だけでも、それがたとえ上辺だけだとしても、夫婦というものを楽しみたいと思った。


時計を見る。もう6時を過ぎていた。
夕方には帰ると言っていたが、清人からは何の連絡もなかった。

花憐は時間を持て余し、キッチンにある大量のグラスや銀食器を磨き始めた。
ゆっくり丁寧に磨き、1時間ほどたったが、それでも清人は帰ってこない。
花憐はキッチンの掃除まで始め、リビングの窓や床まで拭いた。清人の靴も全て磨いたが、
時間はなかなか過ぎない。
勝手にいろんなことをやっても怒られると思い、花憐は靴を磨き終わると、携帯を確認した。
何の連絡もなかった。時間は9時になろうとしている。

花憐は庭に出てぼんやりと空を眺めた。曇り空で月がかすかに見えるだけだった。

出会ったばかりの自分よりも、付き合いの長い女性を優先するのはあたりまえだろう。
久しぶりに会って、離れがたくなってるに違いない。
こうして待っていることが、清人にとっては迷惑なことかもしれない・・・。

花憐はテラスの板張りに座り込んで、月を見上げた。
金木犀の香りが漂ってくると、少し安心した。
目を閉じて、父と母と過ごしていた日々を想い出す。

庭の金木犀の香りを、三人で楽しみながらのんびりお茶をしたことや、眠る前、母と一緒に月を眺めながら月にいるウサギの話をしたこと・・・。

思い出に浸りながら、花憐はいつのまにか眠っていた。
物音がして、ハッと目を覚ますと、清人が立っていた。

「・・・・・・・」
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