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明日に架ける橋
第2章 秘めた想い
しかし、花憐はすぐに考えを改めた。
ここに来てから、何度か女性が家を訪ねてきたことがあった。
同じ女性ではなく、その都度違う女性で、花憐は清人に居留守を使うように言われていたので出ることはなかったが、その度に居心地悪く、自分がここにいてはいけないような気が
するのだった。

支度が済んだ清人が再びリビングに現れ、食器を洗っていた花憐に行ってくると声をかけた。

玄関前の姿見で全身をチェックしている清人に花憐は見惚れた。
背が高くスラリとした身体の清人に、ブラックのフォーマルスーツが良く似合う。

スカーフとおそろいのポケットチーフは千鳥格子柄の光沢のあるもので、清人が見に着けると全く嫌味なく収まっている。

視線を落としてカフスボタンをはめている横顔は美しく、清人と一緒にいるだけで満たされる女性が多いのも頷ける。

今夜もあの時のように女性に囲まれて、誰かとダンスをするのだろうか・・・。

想像しただけで胸が苦しくなってくる。

「遅くなると思うから」
「はい・・・・」

花憐は行ってほしくないという気持ちを悟られないよう、表情を作ってわずかに微笑んだ。

いつものように花憐の手を取ってキスしようとした清人だったが、ぎこちない笑顔の花憐を
しばらく見つめたあと、身を屈めて花憐の唇にキスした。
短いが、力強いキスだった。

じゃあ、と言って出て行ったドアを花憐はしばらく見つめていた。
清人がいなくなると感じる寂しさや孤独感は日に日に大きくなっていくのだった。
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