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アルルの夜に始まる恋
第4章 繋がる心
「タクシーの運転手に感謝だ」
「・・・え?」
「君が大使館に行ってる間に、本当は待たずに帰ろうと思ってたんだ。けど、運転手に待つように言われてね。
『彼女を悲しませてはいけない。急いでいるわけではないなら待っているべきだ』って」

小夜はようやく笑顔を見せて、そうだったの・・・と言って涙を拭く。

「それなら、私のパスポートを盗った悪い奴にも感謝しないといけないことになるわね」
「そうさ。僕らの出会いには、あらゆる人が関わっている。君のお母さんも、君のお父さんも、そしてゴッホもね」

小夜は頷いた。

「きっと、何もかも、あなたに出会うためだったのね」

小夜は照れもせず、微笑んで言った。女神のように美しい笑顔だった。

「そうだよ。君の美しい裸を見に、僕はパリに来たんだ」

小夜の耳元で囁く。途端に耳がピンクに染まる。
早くもう一度ベッドの上で抱きしめたい。

その時だった。

「ヘイ!君達!奇遇だなあ!」

アルルのカフェでロイ達を新婚夫婦と間違えたアメリカ人の老人だった。

「おや?泣いているね。だめだよ、愛しい人を泣かせては」

ロイと小夜は顔を見合わせて笑った。

「ん?なんだかアルルで会った時より表情が生き生きとしてるねえ。何かいいことあったかい?」

小夜は照れながらイエスと答えた。
すると老人はノーノーと首を振って言った。

「君じゃなくて、彼の方さ。まるで違う目をしてる。なんだかずっと幸せそうだ」

ロイは驚いた。
どうやらたったの二日で僕の人生は人が見てもわかるほど大きく変わったようだ。

小夜を見る。小夜もロイを見上げて、嬉しそうに微笑んでいた。

そうだ。小夜に出会う前とくらべて僕はずっと幸せだ。
ロイは目を細めた。

老人はそんな二人をニコニコして眺めて勢い良く言った。

「メリー・クリスマス!」
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