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アルルの夜に始まる恋
第1章 いくつかの偶然
「私の名前は小夜」
「サヨ?」
小夜はうんと頷いて、今度はロイに名前を尋ねた。
「ロイだ。よろしく」
ロイは手を差し出した。
「でも、その・・・’ウォルターさん’てお呼びしたほうがいいんじゃないかしら」
小夜はおずおずと手を差し出した。
ロイは首を横に振って言った。
「ロイでいいよ。アルルの旅を楽しもう」
そう言って小夜と握手した。
小夜の手は細く冷たく、か弱い印象を与えた。
TGVが走り出す。ロイは外を眺めた。日が暮れたパリの町並みが見える。
「それにしても、パスポートもお金も失くして災難だったね」
「本当に・・・。昨日、パリに着いたばかりで、今日の昼に失くしていたの」
「昨日?じゃあ、全く観光していないじゃないか」
小夜はため息をついた。
「疲れてたのか、メトロでうとうとしてたら、首からさげてた小さいバッグがなくて・・・。私って、ほんとうに駄目ね・・・」
最後は日本語で呟くように言っていたが、落ち込んでいるのはわかった。
「・・・なぜアルルに行きたいの?」
ロイの質問に小夜は言おうかどうかためらっているようだった。小夜はコーヒーをゆっくりと口にした。
「・・・『夜のカフェテラス』(Le Cafe de soir)って知ってる?」
「ゴッホの?」
アルルといえばゴッホだ。Le Cafe de soirといえばすぐにわかった。
暗い、夜のアルルの街に、カフェテラスの灯りが輝く。
星が瞬く深く青い夜空と、オレンジ色のテラスの灯りのコントラストが見事な絵を頭に思い浮かべた。
うんと小夜は頷いた。
「サヨ?」
小夜はうんと頷いて、今度はロイに名前を尋ねた。
「ロイだ。よろしく」
ロイは手を差し出した。
「でも、その・・・’ウォルターさん’てお呼びしたほうがいいんじゃないかしら」
小夜はおずおずと手を差し出した。
ロイは首を横に振って言った。
「ロイでいいよ。アルルの旅を楽しもう」
そう言って小夜と握手した。
小夜の手は細く冷たく、か弱い印象を与えた。
TGVが走り出す。ロイは外を眺めた。日が暮れたパリの町並みが見える。
「それにしても、パスポートもお金も失くして災難だったね」
「本当に・・・。昨日、パリに着いたばかりで、今日の昼に失くしていたの」
「昨日?じゃあ、全く観光していないじゃないか」
小夜はため息をついた。
「疲れてたのか、メトロでうとうとしてたら、首からさげてた小さいバッグがなくて・・・。私って、ほんとうに駄目ね・・・」
最後は日本語で呟くように言っていたが、落ち込んでいるのはわかった。
「・・・なぜアルルに行きたいの?」
ロイの質問に小夜は言おうかどうかためらっているようだった。小夜はコーヒーをゆっくりと口にした。
「・・・『夜のカフェテラス』(Le Cafe de soir)って知ってる?」
「ゴッホの?」
アルルといえばゴッホだ。Le Cafe de soirといえばすぐにわかった。
暗い、夜のアルルの街に、カフェテラスの灯りが輝く。
星が瞬く深く青い夜空と、オレンジ色のテラスの灯りのコントラストが見事な絵を頭に思い浮かべた。
うんと小夜は頷いた。