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君の瞳に映る白い花【おまけ追加しました】
第1章 思いがけないプロポーズ
冬子はふと、母の部屋にある仏壇の父の写真を見た。
冬子にそっくりなおおきな猫目に漆黒の髪の父。冬子が2歳の時に交通事故で亡くなった。

父と母は幼馴染だった。悠と冬子と同じような関係で結婚したと聞いている。

「お母さん」
「うん?」
「お母さんもやっぱり・・・・早く結婚してほしい?私に」

美代はあまり冬子に結婚の話を持ち出したりしない。
基本的に何でも本人にまかせるという考えの人だ。

「うーん・・・・子供が欲しいなら早い方がいいかなとは思うけど・・・・・。でも焦って好きでもない人と結婚してほしくもないし・・・・」

美代は言葉を選びながらゆっくり話した。
冬子は美代のこういった話し方が小さい頃から好きだった。

こども相手にも真剣に、丁寧に言葉を選ぶ。自分を対等に思ってくれてる気がするからだ。

美代はふと顔を上げて、冬子を見た。
寄り添って冬子の肩を抱く。

「冬子が選んだ人なら、間違いないってお母さん思ってるから」

冬子は母の愛情を感じて微笑んだ。

母と二人でずっと生きてきた。父親がいなくていじめられたこともあったが、幸せじゃないと感じたことは一度もない。それだけ母の愛情が深かったからだ。

結婚しても母を置いていくようなことはしたくない。できればずっと側にいたいし、いてあげたいと思ってきた。

美代にお風呂に入れと促され、冬子は古い小さな風呂場に向かった。湯船に漬かって悠の言葉を反芻する。

『俺はおばさんのことも好きだし、お前だってうちの親が好きだろ?家対家も何も問題ないじゃないか』
『セックスがプラスされるだけ』

(プラスされるだけって・・・・・)

悠にとって、そんな風に言えるほど簡単なことなのだろうか。冬子にはとてもじゃないが軽く考えられることではない。
確かに母のことを考えたら、悠ならきっと自分の母のことも大事にしてくれるだろう。

(でも・・・・なんだろう・・・・このもやもやは・・・・・)

冬子は先ほどからずっと感じてる違和感は何なのだろうと考えた。
何に対してもすぐ答えの出せる冬子にとって、こんなにも考えがまとまらないことは初めてだった。

風呂から上がると、美代はもう寝ていた。

冬子はそっと自分の部屋へと入る。
休みの前の日は本を読んだり映画を見たりして夜更かしするのだが、本を開いても読む気にならず、冬子は大人しく布団に入った。
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