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月夜の迷子たち
第1章 鏡の中の世界から
瑠花という女性はすぐに祐哉の熱に気がついたようだった。
両手で祐哉の頬を包み込む。

「ひどい熱・・・・!体は?怪我してない?」

瑠花は強引に毛布をめくり、祐哉の全身を確認した。

「いッ・・・・!」

瑠花が左足に触れると祐哉は顔を歪めて呻いた。

瑠花は大きな声で外にいる人間を呼んだ。

「急いで車まで運んで!」

男たちは三人がかりで祐哉の体を持ち上げた。

「待て、大丈夫だから・・・・」

祐哉は力なく抵抗したが、男たちに抗う力は残ってないようだった。
体が持ち上がった拍子に毛布がめくれ、祐哉の背中が見えた。
同時にぼとりと何かが落ちた。
血に染まった白いTシャツだった。

(え・・・・・・?)

背中には大きな傷が見え、毛布には血がべっとりとついていた。

紗奈は驚愕の表情で口を押さえた。

瑠花も傷に気がつき、小さな悲鳴をあげる。

「なんてこと・・・・!」

瑠花の悲痛な想いは紗奈に怒りとして向けられた。

「何故すぐに病院へ連れていかなかったのよ!」

怒りで歪んだ美しい顔で、紗奈を殺さんばかりに睨み付けた。

「わ・・・わ、私・・・・」

紗奈の足がガクガクと震える。

瑠花はゆっくりため息をつくと、目を瞑って自分を落ち着かせるために何かを呟いた。

「こちらで休ませていただいたことは感謝するわ。どうぞ今日のことはお忘れになって。あとは私が命に代えても彼を助けますから」

瑠花は冷静になるよう努めていたが、声が震えていた。

紗奈はそれ以上立っていられず、崩れるようにその場に跪いた。
瑠花はそんな紗奈を冷たく見下した表情で見つめると、走ってその場を去った。

車のエンジンの音が聞こえ、すぐに遠くに消えていった。
祐哉のシャツからポタポタと落ちる雫の音だけが部屋に残った。

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