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月夜の迷子たち
第1章 鏡の中の世界から
強く手を引かれ、紗奈はもう一度座り込んだ。
「でも・・・・・!」
「君の手、冷たくて気持ちよかった。もう一度ここにあててほしい」
そう言って自分の額を指差した。
紗奈は躊躇したが、言われるがままに額に手を置いた。
違う・・・こんなことをしている場合ではないのだ。
タオルを氷水で・・・いや、病院に・・・・。
濡れた瞳が、紗奈の判断を鈍らせる。
紗奈は魔法でもかかったかのように、動けないでいた。
男が掴んでいた紗奈の手を、自分の頬へと導こうとしたその時だった。
ドンドンドンドン!!
激しくドアを叩く音が響いた。
二人は同時にビクッ!と体を強張らせた。
「祐哉!祐哉、いるんでしょう!?」
それは若い女性の声だった。
紗奈は急いでドアを開けた。
そこには黒髪のボブヘアを乱して、泣きそうな顔をした少女が立っていた。
少女から女性になろうとしている、おそらく二十歳になる前頃の。
その背後には複数の男性が見えた。
小動物のような愛らしい大きな瞳は、紗奈をみると、みるみる怒りの炎を燃え上がらせたが、取り乱してはいけないと心を落ち着かせるように大きく深呼吸をしてから尋ねた。
「祐哉はどこ?」
少女はあたりをぐるりと見回し、男の姿を捕らえる。
「祐哉!」
少女は祐哉と呼んだその男に駆け寄り、その体を抱きしめた。
「良かった!」
「瑠花・・・・」
「でも・・・・・!」
「君の手、冷たくて気持ちよかった。もう一度ここにあててほしい」
そう言って自分の額を指差した。
紗奈は躊躇したが、言われるがままに額に手を置いた。
違う・・・こんなことをしている場合ではないのだ。
タオルを氷水で・・・いや、病院に・・・・。
濡れた瞳が、紗奈の判断を鈍らせる。
紗奈は魔法でもかかったかのように、動けないでいた。
男が掴んでいた紗奈の手を、自分の頬へと導こうとしたその時だった。
ドンドンドンドン!!
激しくドアを叩く音が響いた。
二人は同時にビクッ!と体を強張らせた。
「祐哉!祐哉、いるんでしょう!?」
それは若い女性の声だった。
紗奈は急いでドアを開けた。
そこには黒髪のボブヘアを乱して、泣きそうな顔をした少女が立っていた。
少女から女性になろうとしている、おそらく二十歳になる前頃の。
その背後には複数の男性が見えた。
小動物のような愛らしい大きな瞳は、紗奈をみると、みるみる怒りの炎を燃え上がらせたが、取り乱してはいけないと心を落ち着かせるように大きく深呼吸をしてから尋ねた。
「祐哉はどこ?」
少女はあたりをぐるりと見回し、男の姿を捕らえる。
「祐哉!」
少女は祐哉と呼んだその男に駆け寄り、その体を抱きしめた。
「良かった!」
「瑠花・・・・」