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月夜の迷子たち
第8章 物語の続き
紗奈は懐かしい風景の中にいた。
絵の師匠のアトリエだ。
師匠の背中が見える。机に向かって何かを一生懸命描いている。
「先生・・・・・?」
紗奈は師匠の手元を覗き込んだ。
そこにはあのシャーロットの姫の絵本があった。
師匠が最後のページを絵の具で塗りつぶしている。
「先生、どうしてそんなことをしてるんですか?」
師匠が紗奈を見て微笑んだ。
紗奈が大好きだった優しい眼差し・・・・・・。
久しぶりに会う師匠に安心感を感じて紗奈は隣の椅子に座ると語りかけた。
「先生・・・・・私、絵が描けなくなってしまったんです・・・・・・。キャンバスに向かっていつも通りに描こうと思うんですけど、今までどうやって描いていたのかわからなくなって・・・・・・。作者の気持ちが・・・・・作者の技術が全く入ってこなくなってしまったんです・・・・・」
師匠は絵本の最後にすらすらと絵を描いた。
「描かなきゃって焦れば焦るほど、掴めなくて・・・・・・。まるで砂が指の間からこぼれていくような・・・・・・・」
師匠は何も言わずに紗奈の頭をよしよしと優しく撫でた。
涙がこぼれた。
『絵はいつだって君の心を映し出す。例えそれがレプリカだとしても』
生前、師匠が紗奈に良く言った言葉だ。
きっと今も同じことを言いたいのだ。
「今の私の心はぐちゃぐちゃです・・・・・・だから描けないのですね・・・・・・・。絵が描けなくなったら、私、どうやって生きていけばいいんでしょう・・・・・・」
師匠は絵本を紗奈に渡した。
最後のページを見ると、舟の上で息絶えたシャロットではなく、そこにはランスロットとシャロットの姫が教会の前でキスをしているシーンに変わっていた。
絵の師匠のアトリエだ。
師匠の背中が見える。机に向かって何かを一生懸命描いている。
「先生・・・・・?」
紗奈は師匠の手元を覗き込んだ。
そこにはあのシャーロットの姫の絵本があった。
師匠が最後のページを絵の具で塗りつぶしている。
「先生、どうしてそんなことをしてるんですか?」
師匠が紗奈を見て微笑んだ。
紗奈が大好きだった優しい眼差し・・・・・・。
久しぶりに会う師匠に安心感を感じて紗奈は隣の椅子に座ると語りかけた。
「先生・・・・・私、絵が描けなくなってしまったんです・・・・・・。キャンバスに向かっていつも通りに描こうと思うんですけど、今までどうやって描いていたのかわからなくなって・・・・・・。作者の気持ちが・・・・・作者の技術が全く入ってこなくなってしまったんです・・・・・」
師匠は絵本の最後にすらすらと絵を描いた。
「描かなきゃって焦れば焦るほど、掴めなくて・・・・・・。まるで砂が指の間からこぼれていくような・・・・・・・」
師匠は何も言わずに紗奈の頭をよしよしと優しく撫でた。
涙がこぼれた。
『絵はいつだって君の心を映し出す。例えそれがレプリカだとしても』
生前、師匠が紗奈に良く言った言葉だ。
きっと今も同じことを言いたいのだ。
「今の私の心はぐちゃぐちゃです・・・・・・だから描けないのですね・・・・・・・。絵が描けなくなったら、私、どうやって生きていけばいいんでしょう・・・・・・」
師匠は絵本を紗奈に渡した。
最後のページを見ると、舟の上で息絶えたシャロットではなく、そこにはランスロットとシャロットの姫が教会の前でキスをしているシーンに変わっていた。