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月夜の迷子たち
第10章 抗う心
「・・・・・そんなに単純に楽しめるものじゃない。君の想像以上に大変だからな」
「うん!頑張る!」

レイアが俊に満面の笑みを向ける。
微笑ましくて思わず表情が緩みそうになる。

彼女の魅力にどんどん惹かれていくのに気づきながらも、俊は抗おうとした。
自分だけのものに出来たらどんなにいいか・・・・・。

今ここで引き寄せてキスしたら、どんな顔をするだろう。
彼女はまるで俊の気持ちに気づいていない。
彼女にとって自分は友人でもなく、ただ良く顔を合わせる知り合い程度でしかないことは良くわかっていた。

俊はレイアから視線をそらし立ち上がると、これまでの子ども食堂の企画書がまとめてあるファイルを手渡した。

「これに目を通して、質問や何かやりたいことがあればまとめておいてくれ。週末改めて話し合おう」
「はーい!」

レイアは嬉しそうにファイルを手にすると颯爽と部屋を出ていった。

征哉が言っていた『お前のためでもある』という言葉。
征哉は恐らく俊の気持ちに気づいているのだ。

レイアと二人になれる時間を提供して距離を近づけようとしているのだろうが、そんなことをしても無駄だと俊は冷めた心で思った。

彼女は自分に恋などしない・・・・・・。



叶わぬ恋など、するだけ無駄だ。俺は塔から出るつもりはない。
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