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月夜の迷子たち
第2章 再会
祐哉は立ち上がると紗奈の前に跪き、顔を覗き込んだ。
間近に祐哉の心配そうな眼差しが見えてドキリとする。

「大丈夫です。ごめんなさい」

祐哉が紗奈の手から鉛筆を取り上げ優しく握る。

「今日はもうこのくらいにしよう」
「いえ、私はまだ・・・・・」
「急がなくていい。・・・・・ゆっくり、なるべく時間をかけて丁寧に描いてほしい」

祐哉の親指が紗奈の手の甲を撫でた。
まるでずっとここにいて欲しいと言っているような口調だった。

紗奈の心臓がドキドキと早く打ちつけ胸が苦しくなる。
紗奈はどうしたらいいのかわからず祐哉の眼を見ることが出来なかった。

遠くから足音が聞こえてくる。
次第に近くなって、ドアの前で止まったかと思うと、コンコンとドアを叩く音がした。

「失礼します。松代様宛てにお荷物が届いております」

藤原のいつも通りの落ち着いた声がドアの向こうから聞こえる。

「・・・・は、はい!」

紗奈は慌てて立ち上がった。
祐哉は紗奈の手を離さずに、自分も立ち上がった。

スケッチブックも取り上げて紗奈の両方の手を掴み手の甲の感触を味わうように撫でる。

「・・・・・・!」
「俺が運ぶ。そこに置いておいて」

ドサリ、と荷物が床に置かれた。
祐哉の瞳が魅惑的に煌いて、紗奈は逃げるように手を引いた。

急いでドアを開ける。

藤原は背を向けて去ろうとしていたが、すぐに紗奈に向き直った。

「あ、ありがとうございます・・・・!」
「松代耕太様からのお荷物でございます」

お運びしましょうか、と祐哉に目だけで合図する。
祐哉は苦笑いしながら小さく頷いた。

紗奈は祐哉と二人きりの空間から逃れられてホッと小さくため息をついた。
祐哉はそんな紗奈を見て、クスリと笑った。

「じゃあ、俺も帰るよ」

祐哉を見送るために一緒に外へ出た。

冷たい夜風の中、見つめ合った。

「おやすみ」
「おやすみなさい・・・・・」

祐哉は名残惜しそうに紗奈をまっすぐ見つめると、じゃあ・・・・と言って帰っていった。

祐哉の背中はまっすぐ伸び、颯爽と歩く姿は彼の育ちの良さを感じさせた。

紗奈は自分と祐哉の間にある隔たりを強く感じ、何年ぶりかに感じる切なさを胸に、見えなくなるまで祐哉の背中を見つめた。
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