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月夜の迷子たち
第4章 月下の迷子の手
「・・・・何をそんなに恐れているの?僕たちはいたって普通の人間だよ。確かに少し・・・・いや、かなり裕福かもしれないけど、それが何だ?親族の中には、倫理的に君より堕落した人間はたくさんいるし、精神面で比較したら君の方がよっぽど清らかで立派だよ」

征哉はソファの前に椅子を置いて、紗奈に語りかけた。

「そもそも、君と祐哉はまだはっきりと想いを伝え合ったわけでもないだろう?今すぐ結婚するわけじゃない・・・もちろん俺は賛成だけど、それ以前の段階じゃないか。祐哉の気持ちに答えられないなら、それでいい。それならそれで、はっきりそう言うべきだ。こんな風に一方的に拒絶されたら、誰だってきついよ?君が逆の立場だったら、いっそはっきりフッてくれって思わない?」

征哉に言われて、紗奈はハッとした。

自分が傷つきたくないばっかりに、そこに触れなければ怪我をしないと決めつけ、自分だけを守って、相手の心まで考えていなかったことに気がつく。

「ごめんなさい・・・・私・・・・・」

紗奈は泣きそうになって、唇を噛んだ。

「僕に謝る必要はないよ。本人に直接言ってあげて」

征哉は紗奈の身体を支えて起こし、ホットミルクを飲ませてくれた。
胃に暖かさを感じて、安心した。

「明日、祐哉の誕生会なんだ。まあ、君の想像通りの派手なやつだから、君は無理に参加してとは言わないよ。ただ、祝いの日だし、明日の夜は鍵を開けておいてあげてくれないか?祐哉と話をしてあげて」

わかりました・・・・、とか細い声で紗奈は返事した。

「今日はゆっくり休んで」

そう言って征哉は紗奈の頭を優しく撫でた。
その心地よさに、紗奈はすぐに深い眠りについたのだった。
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