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月夜の迷子たち
第4章 月下の迷子の手
華やかなパーティーの賑わいが、屋敷の光と共に、大きな窓から庭へ溢れている。
紗奈はアトリエの外に置いてあるベンチに座って、ぼんやりと空を眺めていた。
丸い綺麗な月が空にぽっかり浮かび、屋敷を仄かに照らしている。
垂らした長い髪がさらさらと風に揺れた。
今まさに、屋敷の中では祐哉の誕生日会が開かれている。
クラシックの生演奏が微かに耳に届く。
征哉にアトリエの鍵を開けておくように言われたが、はっきり時間を指定されたわけでもなく、仮に祐哉が誕生日会の後に紗奈のアトリエを訪れるとして、いったい何時になるのだろう。
祐哉が来た時に絵に集中してたら失礼かと思い、何もせず大人しく待つことにした。
紗奈は時間を持て余し、立ち上がって庭を散歩することにした。
庭の小道は庭全体の周りをぐるりと囲うように造られていて、レンガが敷いてあり、ところどころに青い小さな花が咲いている。
ゆっくり歩いて普段行くことのない屋敷の裏へと向かう。
賑やかな笑い声が漏れる裏口を横切って先に進むと、六角形のガラスで出来た小さな小屋が見えた。
(温室・・・・・?)
紗奈はこっそり中に入ってみる。
様々な植物に囲まれるように、白いピアノが置かれていた。
椅子に座ってピアノの蓋を開けてみる。ずいぶん古いものだったが、綺麗な音が出た。
タン
タ
タ
タタタ…
紗奈は右手の人差し指で鍵盤をゆっくり押していく。
『ドビュッシーの月の光』
紗奈はピアノは弾けないが、この曲は綺麗な月が見える日に絵の師匠が良く弾いていて、少しだけ教えてもらった。
月の光の美しさ
好きな人を想う切ない気持ち・・・・・
音楽もまた作曲家の心中を表現するのだな、と改めて思う。
紗奈のピアノの音に混ざって、温室の扉がギィと鳴った。
どきりとして振り向く。
スーツ姿の祐哉が立っていた。
祐哉の艶やかな髪が月明かりに照らされ輝き、長い睫毛の陰が頬に落ちた。
紗奈を切なげに見つめる表情は、征哉が言うように痛々しく見えた。
紗奈はアトリエの外に置いてあるベンチに座って、ぼんやりと空を眺めていた。
丸い綺麗な月が空にぽっかり浮かび、屋敷を仄かに照らしている。
垂らした長い髪がさらさらと風に揺れた。
今まさに、屋敷の中では祐哉の誕生日会が開かれている。
クラシックの生演奏が微かに耳に届く。
征哉にアトリエの鍵を開けておくように言われたが、はっきり時間を指定されたわけでもなく、仮に祐哉が誕生日会の後に紗奈のアトリエを訪れるとして、いったい何時になるのだろう。
祐哉が来た時に絵に集中してたら失礼かと思い、何もせず大人しく待つことにした。
紗奈は時間を持て余し、立ち上がって庭を散歩することにした。
庭の小道は庭全体の周りをぐるりと囲うように造られていて、レンガが敷いてあり、ところどころに青い小さな花が咲いている。
ゆっくり歩いて普段行くことのない屋敷の裏へと向かう。
賑やかな笑い声が漏れる裏口を横切って先に進むと、六角形のガラスで出来た小さな小屋が見えた。
(温室・・・・・?)
紗奈はこっそり中に入ってみる。
様々な植物に囲まれるように、白いピアノが置かれていた。
椅子に座ってピアノの蓋を開けてみる。ずいぶん古いものだったが、綺麗な音が出た。
タン
タ
タ
タタタ…
紗奈は右手の人差し指で鍵盤をゆっくり押していく。
『ドビュッシーの月の光』
紗奈はピアノは弾けないが、この曲は綺麗な月が見える日に絵の師匠が良く弾いていて、少しだけ教えてもらった。
月の光の美しさ
好きな人を想う切ない気持ち・・・・・
音楽もまた作曲家の心中を表現するのだな、と改めて思う。
紗奈のピアノの音に混ざって、温室の扉がギィと鳴った。
どきりとして振り向く。
スーツ姿の祐哉が立っていた。
祐哉の艶やかな髪が月明かりに照らされ輝き、長い睫毛の陰が頬に落ちた。
紗奈を切なげに見つめる表情は、征哉が言うように痛々しく見えた。