この作品は18歳未満閲覧禁止です

  • テキストサイズ
月夜の迷子たち
第4章 月下の迷子の手
華やかなパーティーの賑わいが、屋敷の光と共に、大きな窓から庭へ溢れている。

紗奈はアトリエの外に置いてあるベンチに座って、ぼんやりと空を眺めていた。

丸い綺麗な月が空にぽっかり浮かび、屋敷を仄かに照らしている。
垂らした長い髪がさらさらと風に揺れた。

今まさに、屋敷の中では祐哉の誕生日会が開かれている。
クラシックの生演奏が微かに耳に届く。

征哉にアトリエの鍵を開けておくように言われたが、はっきり時間を指定されたわけでもなく、仮に祐哉が誕生日会の後に紗奈のアトリエを訪れるとして、いったい何時になるのだろう。

祐哉が来た時に絵に集中してたら失礼かと思い、何もせず大人しく待つことにした。

紗奈は時間を持て余し、立ち上がって庭を散歩することにした。

庭の小道は庭全体の周りをぐるりと囲うように造られていて、レンガが敷いてあり、ところどころに青い小さな花が咲いている。
ゆっくり歩いて普段行くことのない屋敷の裏へと向かう。

賑やかな笑い声が漏れる裏口を横切って先に進むと、六角形のガラスで出来た小さな小屋が見えた。

(温室・・・・・?)

紗奈はこっそり中に入ってみる。
様々な植物に囲まれるように、白いピアノが置かれていた。

椅子に座ってピアノの蓋を開けてみる。ずいぶん古いものだったが、綺麗な音が出た。

タン


タタタ…

紗奈は右手の人差し指で鍵盤をゆっくり押していく。


『ドビュッシーの月の光』


紗奈はピアノは弾けないが、この曲は綺麗な月が見える日に絵の師匠が良く弾いていて、少しだけ教えてもらった。

月の光の美しさ
好きな人を想う切ない気持ち・・・・・

音楽もまた作曲家の心中を表現するのだな、と改めて思う。

紗奈のピアノの音に混ざって、温室の扉がギィと鳴った。

どきりとして振り向く。

スーツ姿の祐哉が立っていた。
祐哉の艶やかな髪が月明かりに照らされ輝き、長い睫毛の陰が頬に落ちた。

紗奈を切なげに見つめる表情は、征哉が言うように痛々しく見えた。
/290ページ
無料で読める大人のケータイ官能小説とは?
無料で読める大人のケータイ官能小説は、ケータイやスマホ・パソコンから無料で気軽に読むことができるネット小説サイトです。
自分で書いた官能小説や体験談を簡単に公開、連載することができます。しおり機能やメッセージ機能など便利な機能も充実!
お気に入りの作品や作者を探して楽しんだり、自分が小説を公開してたくさんの人に読んでもらおう!

ケータイからアクセスしたい人は下のQRコードをスキャンしてね!!

スマートフォン対応!QRコード


公式Twitterあります

当サイトの公式Twitterもあります!
フォローよろしくお願いします。
>コチラから



TOPTOPへ