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私の欠けているところ
第1章 『再会』から
「ご、ごめんなさい!
私、道間違えちゃったかも…」
深海さんは
あの日のように
両手で口元を隠しながら
焦った顔で俺を見上げた
「いいですよ。
俺一人でも
多分迷いましたから」
「でも、時間は?
大丈夫?
えっと…現在地は…」
深海さんは
慌てて携帯を取り出し
現在地を確認し始めた
「深海さん」
「は、はい」
「沖縄屋の近くに
何か目印になるようなもの
ありますか?」
「えーっと…
あ、ホテルがあるの
ホテルプラトン」
「なんだ。
それなら反対方向ですよ。
あっちです、沖縄屋」
そう言って
来た道を指差すと
深海さんは
すごく申し訳なさそうな顔をしたんだっけ
あとで分かったんだけど
深海さんは
すごく仕事ができる人なのに
猛烈な方向音痴なんだ
それはもう
信じられないくらいに
だから俺はあの時
深海さんともう一度
あのケーキ屋まで
一緒に歩くことが出来たんだ
目を潤ませていた
あのケーキ屋まで
深海さんが
迷子にならないように