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私の欠けているところ
第8章 泥沼のような地獄だった
よく行く店で落ち合い
俺も矢部さんもビールを飲み
ほろ酔いになった頃…
「お前、女いるのか?」
「え?なんすか急に」
「いーから」
「今は…いませんけど」
「いつから」
「一年前くらいから。
支店に行って
遠距離になって
ダメになって…
それからはまだ」
「ふーっ…そうか」
「はい」
「お前さ」
「はい」
「時ちゃんと
どういう関係だ?」
「え?時ちゃんって
深海さんのことですか?」
俺は
必死で冷静を装ったけど
多分
矢部さんには
俺の焦りが
伝わってしまったと思う
それは
あまりにも
予想外の言葉だったからだ
「あぁ」
「何もないですけど
どうかしたんですか?」
歳は離れてるけど
もし万が一
俺が付き合ってたとしたって
問題ないじゃないか
「それならいいんだが…
お前と時ちゃんを
海で見たって奴がいてな」
海…
確かに
会社から離れてる海で
俺と時は
開放的になっていた
もしかして
ホテルに入るとこ
見られたんじゃ…
「人違いじゃないですか?」
「それならいいんだが…」
矢部さんの返事は
まだ俺を
疑ってるような言い方だった
「わざわざ
言うことでもねーと思ってたから
言わなかったんだけどな」
「はい」
「時ちゃんはやめとけ」
「え?」
「時ちゃんは…やめとけ」
「どうして…ですか?」