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私の欠けているところ
第1章 『再会』から

それから俺は
仕事帰りに
ケーキ屋まで足を運ぶようになった


会社では
ほとんど会うことのない
深海さんに会うためだ


早く仕事が終わった日だけ
前に深海さんと会った
あのケーキ屋まで行き
中を覗いてから
深海さんが向かった駅まで歩いたりした


深海さんは
あんなに素敵なのに
未だ未婚で35才

それには何か理由があるはず

矢部さんの様子も
ちょっとおかしかったし
『けど…』の意味も
俺はまだ知らなかった

それでも俺は
深海さんと会う偶然を
狙っていたんだ


忘れられなくて


優しい横顔

柔らかそうな髪

焦った時に
口元を手で隠す癖

その手の指は
折れそうな程細く

冷静な雰囲気なのに
方向音痴


そして

ケーキ屋の前で
涙ぐんでいた

悲しそうな横顔


年上なのに
守ってあげたくなるような
あの悲しそうな横顔が
俺の心を支配していた


そんなある日


俺はやっと
深海さんに遭遇することができたんだ



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