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私の欠けているところ
第9章 だから俺はその地獄から抜け出したくて
「だから…
満たされたくて
色んな人と
付き合ってた
矢部さんから
聞いたと思うけど…
でもね
それは
やめたの
相手を傷つけるから
だから
付き合うのは
一人だけ
複数の人とは
セックスしない
それと…
結婚を望む人とは
しない
でも
陸には甘えちゃって…
ごめんなさい
これで、全部
これが私なの
私の
欠けてるところ」
そこまで話すと
なぜか時は
微笑んでいた
「なんか…
話したらスッキリした
不思議」
「時」
「ごめん
話したら疲れたみたい
陸…
ここで寝てもいい?」
「いいよ
俺…」
「ん?」
「抱きしめててもいい?」
「……うん…」
時は
そのまま目を閉じて
俺に抱きしめられたまま
寝息を立てはじめた
時は
まるで
人のことを話すように
淡々と話していたけど
これまで
どんなに辛い毎日を
送ってたんだろうと思うと
俺は時を
抱きしめずには
いられなかった
時は
俺の告白のことや
アイツと別れろと言ったことには
全く触れなかったけど
今は
それでもいいと
思っていた
こんな話をしたばかりの時を
今はただ
ゆっくりと休ませてやりたかったからだ
明日になれば
もう一度
告白しよう
結婚するかどうか
子供を産むかどうか
それは
沢山話して
どうするか決めればいい
とにかく俺は
この切ない時を満たす
唯一の存在になりたいんだと
身体だけじゃなく
そんなことじゃなくて
愛情を感じさせてやりたいんだと
時に伝えよう
そう思いながら
愛おしい時を抱きしめて
俺も眠りについた
それなのに
翌朝
目が覚めると
もう
俺の部屋に
時の姿はなかった