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私の欠けているところ
第1章 『再会』から

そのやりとりを見て
俺は帰るのをやめて
観察を続けることにした


その男は
深海さんの金を受け取ると
その金をポケットに突っ込み
深海さんの肩をポンポンっと叩くと
あっという間に改札の向こうへと
消えてったんだ


な、なんだよあれ…

あの男
ほんとに恋人なのか?

それともただの知り合いか?

もしかして弟?!

い、いや
あの深海さんに触れる感じは
ただの知り合いじゃない

けど
あんな軽そうな奴が
恋人なのかよ…


そんなことを考えてる間
深海さんは
じっと佇んだまま
その男の背中を見つめてたんだ


俺の立ち位置から
その表情を見ることはできなかったけど
深海さんの背中は
まるで泣いてるみたいだった


ほっとけない


それが
その時の俺の気持ちだった


深海さんには恋人がいて
こんな年下で
頼りない俺なんか
出る幕じゃないことはわかってたけど
そんな背中を見せられて
俺はじっとしてられなくて


気が付いた時にはもう

俺は
深海さんのすぐ後ろに
立ってたんだ


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