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私の欠けているところ
第11章 時を捕まえたときにはもう…
薬を飲んで
落ち着くと
時は相変わらず
俺に帰れとも言わずに
機嫌良くしていた
なんだろ…
俺の部屋で
楽しく過ごしていた頃みたいだ
「時」
「ん?」
「アイツ…亮ちゃんって奴と
別れたってほんとか?」
「うん」
「なんか…言ってた?」
「ううん」
「え、アイツ
そんな簡単に
別れてくれたのか?」
金、もらえなくなるのに
「ん〜…
LINEで伝えただけだから。
亮ちゃんのこと
気になるの?」
「いや、まぁ…
あ、なぁ」
「ん?」
「アイツと
どこで知り合ったんだよ」
「ケーキ屋さんの前で」
「え?ケーキ屋?」
俺はふと
悲しい顔で
ケーキ屋の中を見ていた
時のことを思い出した
「うん。
ケーキ屋さんの前で
中のケーキ眺めてたら
亮ちゃんが声をかけてきたの」
「あ、うん」
「今からケーキを買うんだけど
どれ買っていいか分からないから
一緒に選んでもらえませんか?って」
「…それで?」
「それで…3つ選んであげたんだけど
ケーキ屋さんを出たら
そのケーキ
全部私にくれたの。
一人で買う勇気が無いみたいだったから
どうぞ…って」
なんだよそれ
ただのナンパじゃん
てか
やな感じだ
そう思いながら
時を見ると
さっきまで
なんだか嬉しそうに
ケーキの話をしていた時が
突然暗い顔をして
寒そうに
自分で自分の肩を抱きしめた
「…時?」
「……」
「寒いのか?」
「……うん」
俺は急いで
ベットの上の
タオルケットを手に取り
時を
タオルケットで包むと
時は小刻みに震えていて
…焦った
「大丈夫か?
何かあったかいもの
入れてやろうか?」
「その日ね」
…えっ…
俺の質問に対する返事はなかった
「あ、うん」
「私、誕生日だったの」