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私の欠けているところ
第11章 時を捕まえたときにはもう…
「梶谷くん、大丈夫?」
「俺は平気。
時こそ大丈夫か?」
「…うん…平気」
俺は
時を寝かせて
すぐ横に添い寝すると
時の柔らかな髪を撫でた
俺の弟は
どうしてたっけ
忘れてしまった
破れた袖のことを
結局
思い出したんだっけ…
いや
高校生くらいになっても
まだ
記憶があやふやだったような
気がする
そういえば
時も
おじさんにされたことを
全部は覚えてないって
言ってたよな
えっ…
もしかして
俺とのこと
このまま
忘れてしまうんじゃ…
「ねぇ、梶谷くん」
「ん?」
「お誕生日いつ?」
「笑うなよ?」
「え?(笑)
なにそれ」
「12月25日」
「すごい!」
「笑うだろ?(笑)」
「笑わない!すごい!
天使みたい」
「あはは(笑)
そんなこと言われたの
初めてだ。
クリスマスプレゼントと
誕生日のプレゼント
一緒になっちゃう
最悪なやつだよ」
「そんなことないよ!
大きなケーキ
買ってもらえそう」
「そんなことねーよ(笑)」
「ご馳走とか」
「それもねーな。
俺が小学生の頃には
母親いなかったからな。
頑張っても
親父の作った
オムライスくらいだった」
「……」
「ん?…時?」
時は
突然口を閉ざして
天井を見つめ
何か
考え事をしてるみたいだった
そして
しばらくすると
天井を見つめたまま
弱弱しい声で
ぽつりと呟いた
「そっか…」
「ん?」
「私の誕生日
忘れられてたわけじゃないんだ…」
「え?」
「知ってても
忘れたふり…してたんだ…」
「時?」
「梶谷くん…」
「ん?」
「思い出したよ。
亮ちゃんに
はじめて会った時の事」
「えっ…」
「ケーキ…
自分で自分のケーキ買っても
切ないの分かってるから
買わなかったの
そしたら
亮ちゃんが買ってくれて
嬉しかった。
誕生日に
親がケーキ買ってくれた記憶
ないから
さっき
梶谷くんが
一緒にケーキ
食べたかったって言ってくれて
嬉しかった」