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私の欠けているところ
第12章 時は俺の事を忘れてしまってたんだ

それから出かける準備をしたんだけど
時の行動は
全てがスローだった

服を着るのも
立ち上がるのも
階段を降りるのも

話しかけるのも。


そんな時を支えながら
のんびりと歩く
暗い道

俺は妙に
安堵感を覚えていた


時が
アイツと別れたからかもしれないし
俺の立場が
はっきりしているからかもしれない

Siriだけどさ(苦笑)

それとも
時が好きだと
気持ちを全部
吐き出したからかもしれないな…

今の時が
それを覚えてるかどうか
分からないけど


あ、けど
ひとつだけ
言ってないこと
あったな…


「時…」

「ん?」

「俺さ」

「うん」

「男が好きだって言ったの覚えてる?」

「うん」


「あれさ」


「なに?」



「嘘」



「クスッ(笑)
そうなんだ」



「ごめんな?」



「いいよ」


時は
お互いの身体を
慰めあったことを
忘れたのか
あっさりと俺の嘘を許した


「怒らないんだ」



「怒れないよ」



「なんで?」



「私は
もっと悪い事してるから」



「時は悪くないよ。

悪いのは
時が子供の頃にいた
周りの大人だ」



「……」



「時が思ってるほど
時は悪魔じゃないよ」



「……」



「ちょっと欠けてるだけ」



「……」



「その欠けてるとこ
これから埋めてけばいいんだ」


時には
子供の頃
注がれるはずだった
愛情が足りないんだ

だから

これからいっぱい
愛情を注げばいい


「…埋める?」



「そう。

少しずつだけどな
Siriが埋めていくから」


そう言うと
時は立ち止まって
俺を見上げた


「どうやって?」


「それは…内緒だ」


それは俺もよく
分かってないから


「ケチ」


「クスッ(笑)
ほら、コンビニ着いたぞ。
プリン買うんだろ?」


「うん」


「Siriが
おごってやるよ」


「いいの?」


「もちろん」






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