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私の欠けているところ
第13章 正直、Siriってなんだよ…と、思う

「じゃあそろそろ…帰るよ」
「うん」
わりと
平気そうな時に
ちょっとムカつく俺は
ちっちゃい男だな…
「明日、会社行くなよ?」
「あ…うん」
「約束」
「…わかった」
「じゃあ…」
俺は
玄関で靴を履いて
何度目かの
「じゃあ…」を
口にしていた
そしたら時は
俺の目の前で
「うん、またね」
って軽く言うんだ
またねって
本当だよな?
と、言いたくなる
心配だ…
心配で仕方ない
時が
変な気を起こさないか
アイツがやってきて
時の身体を
好きにしたり
しないだろうか…
時が嫌がっても
無理矢理そんなことしたら
また
幼い頃のこと
思い出して
おかしくなったりするんじゃ…
「時」
「なに?」
「やっぱり」
「うん」
「うちに来ないか?」
「え?」
「時のことが
心配で死にそう」
「…梶谷くん…」
そのとき
時は
俺のことを
梶谷くんと呼んだ
Siriでもなく
陸でもなく
梶谷だった
それは
歳下の頼りない男子
と
言われたような気がして
「俺、頼りになんない?」
そんなことを
言ってしまっていた
「そんなことないよ。
頼りにしてる。
ほんとに」
時の目は
真剣だった
「だから…心配しないで。
寂しくなったら
電話する。
悲しくなったらLINEする。
それから」
「それから?」
「私
死んだりしないから」
時には
俺の心の中が
透けて見えていたらしい

