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私の欠けているところ
第14章 俺は時のなんなんだよって叫びたくなる
電車を降りて
2人並んで歩いた
もう
会社関係の人とは
会わないと思ってるのか
時と俺の距離が近くても
時は何も言うことはなかった
アパートが近くなると
俺はまた
アイツの影を探した
鍵持ってるから
外で待ち伏せてることは
ないんだろうけど…。
「アイツ、待ち伏せてはないな」
「…うん。
梶谷くん…」
「ん?」
「亮ちゃんのこと
知ってるの?」
「え?」
「人はいっぱい居るのに
亮ちゃんは居ないって
会社の前でも
言ってたから」
あぁ…そっか
俺、言ってなかったな
駅でアイツを見たこと
「言いそびれてたけど
時とアイツが駅で話してんの
見たことあるんだ。
時、アイツに
金渡してた」
「…そっか」
「さ、着いたぞ。
どうする?
俺が鍵開けて
アイツ居ないか
見てやろうか?」
「……」
アパートの下で
時は少し考え込んでいた
さっきは
俺をシカトするほど
頑固だったのに
時の表情は暗く
ちょっと泣きそうな顔をしていた
「鍵貸して。
俺、行ってくるから」
「…前に…
こんなことあって
すごく
怒鳴られたこと、あって…」
やっぱり。
携帯の電源落とすほどだから
過去になんかあったんだろうとは
思ってたんだ
「だから時は
ここで待ってろ。
俺が見てくるから」
時は
小さく頷き
俺に鍵を渡した